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第三十八話

毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。

 「あなた方はたくさんの事を知っていらっしゃるのですね。どれくらいの事を知っていらっしゃるのですか?」

〔―この世の全てを。我々は代々の知識を積み重ねて、この時まで生きてきた。長きにわたりこの世を調べ続け、新しいものを生み出してきた。それが我々の力でもあった。新たにものを知るという行為は、我々にとって何においても素晴らしい出来事だった〕

「僕も新しい事を知るのは好きです」

〔我々の時代の若き頃は、お前の様な眼で世界を眺めていたのだろう・・・・・・。イリス、全てを知ってしまった後に残るのは何があると思う?〕

「・・・・・・わかりません」

〔目と心が死んでいるようなものだ。知識だけが過去の記憶の中に、折り重なり積まれ留まっている。心は二度と浮き立つ事はない。我々の種族は既に生きながらに、死んでいるようなもの。それ故第二の太陽は生まれ、我々の時代は終わったのだ〕

「・・・・・・」

イリスは心が死ぬという感情をどういったものなのか理解できないでいた。霧の奥に響く長の声だけが、その感情をもたらす音を静かにイリスに届けていた。

「”闇”に対して、注意することを教えて下さい。その言葉を口にしたことをお許しください」

今まで口を堅く結んでいたリオンが口を開いた。その目と耳は霧の向こうに、響く声を漏らさずに聞こうと一点に集中していた。

〔―よい、口にしても構わない。影響はここには及ばない。”闇”は時に人を操り動かす。”闇”の者は非情に慎重で、狡猾、それでいて力あるものだ。”闇”に操られている本人に気付かれずに心の奥深く潜んでいる事もある。”闇”に侵されているものは見分けるのは、難しい点もある。しかし、”闇”に憑りつかれたものは必ず以前とは少し違った行動をする時があるという。その者の事を良く知っているものならば、見分けがつくだろう、確実に”闇”だとわかる。”闇”は人をよく惑わせる言葉を使う。そうして人の心を弱らせ、その者に憑りつくのだ。”闇”に関わらず人の言葉で疑問が生じた時、その言葉を信じるかは自分の心の声だ。判断に迷う時、己の声に従い行動しなさい。そうすれば、道はお前達の目指す方向へと進んで行く、己を信じる事だ〕


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