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第一話

毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。

   北の銀青山ぎんせいざんを超えて春の女神は,緩やかな風と共に、灰色に凍えていた寒空を深青色に染めて行く。

「もうそろそろランドールですか?」

森の葉影にわずか僅かにのぞ覗く、蒼い空を見上げながら、一人が口を開いた。先に道を行く者の返事は無い。行く手を確かな足取りで、草を切り分けて行く。銀青山の裾野に広がる樹海は、深く、道行く人はいない。

今、二人の者が、微かに続く獣道を、速い足取りで進んでいた。一人は長身で、フードに隠れた顔は、青年の面差しをしていた。くるぶし踝まであるマントを、引きずるようにして歩き、その歩調は、確実に大地を踏みしめ、力強い動きをマントに与えていた。もう一人は、小柄で、少年とも見える若者だった。彼らはむき剥き出しの岩肌を、軽やかに走って行く。森の中は、春の兆しがあり、固かった土も溶け、足元は雪水で重く濡れていた。倒木や岩肌の多い道程にもかかわらず、彼らの歩調は変わらず速かった。二人は時を争うようにこの森を駆け抜けて来た。

「・・・・・・」

青年は、高台にある一本の樹を見つけると、振り返り答えた。

「あれが、ランドールです」

指差す木の下の先、その国は広がっていた。銀青山の麓より樹海に囲まれて、孤島のように、僅かな国土に見えるは、なだらかな丘と高き塔。

「ウィッツランドの高塔ですか?」

小柄な若者がまた質問した。若草色に変わりつつある草地に、極めて高い白亜の建物が聳え立つ。

「そう、ランドールの女王ディーリア・エイヴォン様の居城です」

青年はそう答えると、急ぐように、勾配の高い坂道を駆け下りて行く。その後を、苦も無く若者は走って続くと、二人は森の中へ再び消えて行った。



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