第二十七話
毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。
コンコン。ドアの戸がノックされ、二人を呼ぶ声がした。
―あの声はハイシュタット・ランズベールだ。
リオンとイリスは慌てて荷物を片付け、ベッドの下に押し込んだ。
「リオン様、イリス様、入りますよ?」
彼女がいつものように、蝋燭を片手に部屋に入って来た。二人はベッドの中から彼女を向かい入れた。
「お二人がご一緒に眠るなんて珍しい事、どうかなさったのですか?」
ハイシュタット・ランズベールは、可笑し気にベッドに並んでいる二人を見つめた。
「別に」
「イリスが寂しがったのよ」
リオンの言葉に、イリスの目が軽く動いたが、すぐに何事もないように振舞った。
「おや、珍しい事もあるものですねえ」
ハイシュタット・ランズベールは彼らを疑いもせずに、ベッドの毛布を寒くない様に二人の肩越しまで掛けてやった。
「今日はお菓子をお持ちしました。本来は寝る前に食べる事はいけない事ですけど。今回はお二人仲良くしていらっしゃるし、特別にお作り致しました」
ハイシュタット・ランズベールは、甘い香りのする焼き菓子を二人に差し出した。
「ハイシュタット・ランズベール・・・・・・」
―焼きたてだ。手に取った焼き菓子は二人の手を温かく包み込んだ。
「ありがとう」
イリスは彼女の傍へ近づき頬にキスをした。リオンもイリスに倣って彼女に感謝のキスをした。
「本当にお二人とも今日はどうかしていらっしゃる。こんなふうにいつも素直にいらしたら、ありがたいのですがね」
ホホ、彼女は嬉しそうに声高に笑った。
「おやすみなさいまし」
ハイシュタット・ランズベールは、二人の額を愛おしそうに撫でつけると、戸口に立ち、この部屋から出て行こうとした。
「おやすみなさい・・・・・・」
二人は彼女の後姿に声を掛けた。
「おやすみなさいまし・・・・・・」
ハイシュタット・ランズベールは振り返ると微笑み、部屋を出て行った。彼女の足音が遠ざかる。
―さようなら。二人は心の中でそっと彼女に別れを告げた。
足音が聞こえなくなると、二人は硬く目を閉じ、貝のように身を固くした。やがてすすり泣きにも似た寝息が二人の間で始まり、静かな月夜の下、この国での最後の夜を甘い香りに包まれながら過ごした。




