第二十六話
毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。
「―イリス、忘れ物は無いわね?」
リオンはイリスの荷袋の紐を閉じながら彼に訊ねた。
「無いよ」
イリスはもうやることないと、ベッドの上に寝転んで、ゴロゴロと、身体を右へ左へと転がしている。
「こんなに荷物少なくていいの?イリスは」
イリスの荷袋はリオンの片手で簡単に持てるくらい軽いものだった。
「姉さまの方が多すぎるんだよ」
イリスは自分の物より倍近くあるリオンの荷物に呆れていた。
「―だって、服とか香油とか、色々と女には必要な物よ」
「旅に行くのに格好も何もないよ、姉さま。荷物はなるべく少なくしてくれって、アイン・フォード様も仰っていらしただろう?」
確かに彼も私の荷物に呆れていた様子だったけど・・・・・・少しでもランドールの匂いのする物をリオンは持って行きたかったのだ。
「・・・・・・多いかしら」
リオンは自分の荷袋の紐を解き、不必要なものが無いか探し出した。これは、リディア姉さまが縫ってくれた上等の服だし、手放せないわね。この香油は母様がいつも付けている物で絶対に置いて行けないわ。姉さま達が編んでくれた花嫁のレースもそうね・・・・・・やっぱりみんな持って行きたいわ。
「・・・・・・姉さま」
独りでぶつぶつと考え込むリオンにイリスは全くと溜息をついた。
「その荷袋を持って長時間動けるの?服は動きやすいものを三着、巻物なんて姉さま持って行かないでね」
イリスはリオンの荷物に口を出してきた。
「―わかったわよ」
リオンは弟の言う通りに荷物の整理をし始めた。
そうして、リオンの力で持ち運びが出来る荷物の量の分だけ残し、後は全て置いて行くことになった。
「・・・・・・」
リオンはレースを愛おし気に撫でて別れを告げようとした。
「これ、姉さまのお気に入りなの?」
「―姉さま達が私が将来花嫁になる時に頭に被るレースを編んでくれたの。けど長いし荷物になるわ」
ふうん、イリスはそう言うと姉のレースを取り上げた。
「イリス?」
「僕の荷物に、これだけ入れてあげるから、泣かないでよ」
「イリス、ありがとう!」
リオンは弟の優しい申し入れに抱きついて感謝した。
―きっと、僕の方が旅に出たら苦労する。イリスは姉の甘える重みに、旅の良く先を不安気に思い天を仰いだ。




