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第十二話

毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。

 祭りの広場には満月の夜を迎え、舞台は使者達の舞を待つのみとなっていた。カラカラカラ・・・と木が幾重にも重なり合う音と共に、神の意志を伝える使者の舞が行われる。三人の使者の足音は(ロンド)を繰り返しながらリズムを取り始めた。使者の表情は仮面で表現される。全く同じ仮面を着けている様に見えるが、怒・喜・哀とそれぞれに異なる役割が存在する。使者の演じ手によりその表情は仮面に表れるという。

―炎のゆらめく中浮かんでは消える仮面の表情は不気味だ。イリスはすぐ隣にいる母ディーリアにしがみつきながら舞を見ていた。早く終わらないのかな・・・・・・。イリスはこの舞が怖くて仕方がない。仮面のあの表情の死んだ者から浮かぶ不吉さだけがイリスを不安がらせる。足音の響きは心臓の音と重なり、さらにイリスを責め続けた。

ディーリアは痛いほどに、しがみつく息子の不安に応えるように、自分のマントごと彼を包み、その頭を優しく撫で続けた。

舞は幾度も輪を描き使者は踊りの中で、古来より伝わる神々の意志を伝え続ける。その回数は四十八回繰り返される。その数は聖なる数とされ意味を持つという。しかし、その意味を知る者は誰一人としていない。使者が跪き深く礼を取ると舞は終わりを告げる。

「・・・・・・終わったの?母様」

イリスは目を固く閉じたままそう訊ねた。

「ええ、もう大丈夫よ。イリス」

イリスが顔を上げると人々は、ご馳走を手に取り祝杯を挙げていた。

「私の可愛い息子は、どうしてあの踊りが嫌いなのかしらね」

「―だって・・・・・・何か不吉なものだと思うよ。変だもの」

「神々が残した最大の謎なのにね」

「謎って?」

イリスは母の言葉に興味を引かれた。

「イリスは不思議な事が好きなのに、一番不思議な事を調べようとしないのね」

「どういうこと?」

「この踊りに隠された意味こそ最大の謎かけ、過去の叡智そのものと言ってもいいわ。最も重要でありながら意味は複雑に隠され、英知にたけたもののみが知る事が出来るのよ」

「何が隠されているの?」

イリスは母王の意味深き謎かけに、興味を示し始めた。

ディーリアはその様子を見て取ると静かに頷き「―それを調べるのはイリス、あなた自身なの」と息子に教えた。

「母様は知っていらっしゃるの?」

「誰もその謎は解らなかったの。私は答えの導き手にはならないわ。イリス、叡智を知りたければ、まず自身の知を磨くことから始めなさい」

「・・・・・・」

イリスは母王の言う意味を考え、この答えを探るという知的な興味を持ち始めた。謎に対してイリスは誰よりも探求心が強かった。

「―うん、母様。この謎かけに挑戦してみるよ」

「長い道を行く事になるわね、イリス。答えの先に何があるのかはわからないけど、やってみなさい。その時お前は、後にも先にもないものになるのでしょうね」

ディーリアは我が子をそっと抱き寄せ、何かを呟いた。それは祈りの言葉であったし、嘆きの声だったのかも知れなかった。


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