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第百十話

毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。

 「このソース、ティーチェソースに似てないかしら?」

リオンは宿の夕食で出た鶏料理に懐かしい味を味わうことが出来て、少し興奮気味だ。

「・・・・・・」

イリスも目を輝かせて、鶏料理を口に運んだ。

「ディルンというこの町にある果実から作っているソースです。ティーチェと少し似ていますね」

アイン・フォードはそう教えてくれた。

「口に合いましたでしょうか?」

宿の女主人が声をかけてきた。

「ええ、とても美味しいです。部屋も、とても可愛らしくて気に入りました」

各部屋に花を生け、小さな絵や、様々な飾り物の小物などが、うまい具合に絶妙に飾られ、可愛らしい印象を受けた。この宿の細かな所まで、女主人が気を配っているのがわかる。部屋を彩る細かなレースは、彼女の手作りだという。

「それはよろしゅうございました。食後のお菓子をご用意いたしますね」

優しい笑みを浮かべると女主人は台所へと消えて行った。

「もうずっとここに居てもいいと思えるくらい好きよ、この宿」

リオンは満足そうに微笑んだ。

「・・・・・・」

イリスも深く頷いて見せた。

「そうですね、冬の気配が深まるまで、ここにいましょうか」

アイン・フォードも珍しく先を急ぐような事を言わなかった。彼らが微笑み合う宿の外の向こう山脈の冬はすぐそこまで迫って来ていた。もうすぐこの町にも冬がやって来るのだ。彼らの旅立ちも、近いだろう。枯葉を飛ばして、つむじ風が吹く。




―こうして、アリスタジオールへと旅立つ日が来た。冬がこの町を覆いつくしてしまったのだ。リオン達は冬の身支度をし、宿から出てきた。

「軽いのに暖かいのね、この服は」

「ネールという小動物からとった毛から織った布から作られていますので、軽くて暖かいのです」

そう宿の女主人は教えてくれた。

「そうですか、教えてくれてありがとうございます」

リオンはそう礼を言うと頭を下げた。

「大変お世話になりました。では、行ってきます」

「お気を付けくださいまし」

リオン達は女主人が見送る中、町から旅立って行った。


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