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第百九話

毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。

 山脈の山間の谷にバノンの町はひっそりと佇んでいた。

「静かね・・・・・・時間が止まっているかのよう」

リオンはどこか、ランドールの街にも似ているこの町を一目見た時から気に入ってしまった。牛を放牧しており、谷は放牧地の草で覆われていた。もう冬の気配が牧草地に枯れた色を付けさせていた。穏やかだが、じきに来る冬の静けさが、この町を纏う日も近い事を窺えた。

「この町で一週間ほど逗留します。暑い所から来た身体を冬の寒さに慣れさせてから動きます。しばらくこの町でゆっくりして下さい」

「わかりました」

リオンはこの町でしばらく居られることが嬉しかった。

「ねえ、イリス。この町は、どこか私達の故郷に似てないかしら?」

「・・・・・・」

イリスは静かにコクリと頷いてくれた。

「随分と遠くに来たものね。皆は何をしているかしら?ハイシュタット・ランズベールなんて今頃彼女の好きなお菓子作りをしているかもしれないわね」

リオンは弟と同じように懐かしさを浮かべ目を細めた。

「帰りたいわ、今ほど帰りたい気になったのは初めてよ・・・・・・この風景懐かしいわね」

小さな家の集落の煙突からは夕餉の支度をしているのか、白い煙が上がっている。その様子が

故郷の夕暮れ時に似ていて懐かしさが胸に迫った。

「あの集落に宿があります、行きましょう」

アイン・フォードが声をかけて来た。一同は煙る町中へと歩き出した。


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