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第百六話

毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。

 「ラニエーの事は私達、流浪者(ジプシー)の知恵袋のばあ様の意見を聞くといいよ」

アラファント・イージスはそう言うとついておいで、とリオンの手を引いて連れて行こうとした。

「アイン・フォードさん、リオンを借りていくよ。いいかい?心配ならついて来るといい」

そう言われたアイン・フォードは彼女の言う通りにリオンの後をついて行った。

「ばあ様はこの世をよく知っている。あんたの望む答えが聞けるかもしれないね」

アラファント・イージスはリオンをとある扉へと導いた。

「ばあ様!ちょっと聞きたいことがあるんだ!いいかい?!」

彼女は扉を軽く叩くと大きな声で叫んだ。

「ばあ様は耳が遠いからね。近くだと聞こえがいいんだけど」

アラファント・イージスはリオンの方を見て肩をすくめてみせた。

「・・・・・・扉を開けな」

擦れた声が微かに聞こえた。

「わかった!開けるよ!」

アラファント・イージスはそう叫ぶと扉を開けた。

香木の良い香りが立ち込める中、暗い黒檀のベッドの上に小さな老婆がこちらを見て目を薄めた。




「ラニエーとはあんた方が言う、”闇“の者の声でもある」

アラファント・イージスの信頼するばあ様がリオンに重要な事を教えてくれた。

「あれは“闇”の者の声だったのですか」

リオンは、あの声が“闇”の者の声だった事に愕然とした。あの声はあまりにも自然でリオンに事実だとそう信じ込ませるほどのものがあった。そんな身近に“闇”の力が存在していたことも驚きだった。

「声はいつの間にかその者を獲りこむ、ラニエーに囚われてしまった者は薬を飲み続けなければ、その声に翻弄されてしまうのだよ。今から言う薬物を常に常備する事だ」

「薬を飲めば、声は聞こえなくなるのですか?」

「うむ、声は気にならなくなる。あんたはアリスタジオールに行くのだね?」

「はい」

「そこなら、薬の材料に困る事は無い。この紙に薬に必要な薬草などの資料が書き込まれている、参考にしなさい」

ばあ様がリオン薬の情報が書いてある紙を渡した。

「ありがとうございます」

リオンは恭しく紙を掲げた。彼女は紙に書かれた薬の薬草などを見て、どの材料も知っているものばかりなのに驚いた。

「アンバーの実・・・・・・ナノンの根を砕く。ママリノの髭・・・・・・これは高度な調合方法だわ。おばあ様はどこでこのような薬方を知ることが出来たのでしょう?」

「ふむ、あんたは薬の調合に長けているようだ。我ら流浪者(ジプシー)は古代から続く技術を受け継ぐ者たちなのだよ。だから、“闇”の者の事も知っている」

「そうだったのですか。よくわかりました、おばあ様の知識が確かなのも」

「あんたの居たイスの地のランドール。私達の夢の居所さ」

「・・・・・・!」

リオンは驚いて身体を強張らせた。

「私はリオンの事一切言ってないよ」

アラファント・イージスは慌てて否定した。

「そうだよ、この子は何も知らない。けれど、わかるさ。夢の御人だもの。我らが夢見た過去からの記憶だよ」

ばあ様はリオンを見つめ涙を流した。

「銀細工の髪、青い瞳。すらりとした優雅な手足。私が知っているランドール人の特徴さ」

「・・・・・・」

リオンの姿は髪を染めておらず、自然のままだ。ランドール人の特徴をしているのだろうか。リオンはどうしようもなく、ばあ様の言葉に不安を覚えた。このまま捕まってしまうのではないだろうかという感情が湧き出て仕方が無かった。

「・・・・・・」

その彼女の不安を知ってか、ばあ様はふっと微笑んで見せた。

「大丈夫、私はあんたがイスの地の者だと知っても、この子以外に言わないよ。この子も、他の者には言わないだろう、そういう子に私が育てたのさ。あんたは私の夢の人だからね、特別だよ。生きていて会えるとは思わなかった。過去の夢の人よ、感謝している」

ばあ様はリオンの右手を取って手を重ね軽く叩いた。

「もう私の寝る時間だ。もうお行き。素敵な夢の時間だった。ありがとう」

ばあ様はそう言うとベッドに横になり静かに寝息を立てた。

「―じゃ、行こうか」

アラファント・イージスは静かにリオン達に声を掛けた。


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