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第九十八話

毎週木曜日に投稿します。よろしければ読んでみて下さい。

 アラファント・イージスとの仲はとても良好なものとなり何でも言いあう仲となった。

ある日、アラファント・イージスはある歌を歌ってくれた。題はアウラの詩だ。


 あの日アウラは何処へ行った。あの黒髪の美しき船人と共に海へ行った。

銀色の髪のアウラは遠い海へ渡った。

ヤアベの地に降り立った。ヤアベのその向こうティランへとたどり着き永遠となった。

残されたヤーメは泣いた。海風に混じり泣いた。アウラ アウラ

ヤーメの瞳から涙は枯れ果てた。ヤーメは祈り絶え果てた。

ヤーメはアウラの海に消え果てた。アウラの元へと消え果てた。



美しい擦れた声でアラファント・イージスはリオンの前で歌ってくれた。

「とても、美しい悲しい歌ね」

リオンはそう感想を述べた。

「ティムレオンの詩人が作った詩にうちの演奏家が曲を作った歌なんだ」

「もしかしたら、だけど・・・・・・私その人を知っているかもしれないわ」

リオンは鼓動が鳴るのを抑えながらそう言った。

「知っているの?」

「多分・・・・・・その人カイトという方では?」

「そうだよ、カイト・セイモアだよ」

「ああ、そうだったのね!とても良い詩人になられたのね」

「知り合い?」

「ええ、実は求愛をしていただいた方なのです」

「へえ、男に免疫が無さそうなのにそんなところで、いっちょ前に男性に愛を告白されていたとはね」

「いっちょ前は余計よ」

むう、と頬を膨らませたリオンの顔をアラファント・イージスは指で突いて萎ませた。

「子ども扱いしないで」

リオンは頬を両手で包んで少しむくれた。

「私の可愛い妹だよ。あんたは」

「聞けば同じくらいの年なのに、どうして私が妹なのよ」

「私の方が人生経験は上だからね」

「そんなのわからないじゃない!」

「私は十の年に男に処女を奪われたのさ。男性経験も豊富さ、お嬢ちゃん」

「・・・・・・そんなの、私は未経験だけど」

「―あんたが乱暴された時、その前に助けてやればよかったね。嫌な男の感触は思い出したくないだろう。あれは本当に嫌なものさ」

「・・・・・・」

リオンはアラファント・イージスがどんな人生経験をしてきたのか、想像を超えていたので、彼女に声を掛ける言葉が浮かばなかった。

「・・・・・・私は本当に子供なのね」

と漸く心の奥に浮かんだ言葉を口にした。

「あんたはそれでいいのさ、私みたいにならなくていい」

「そう?」

「あんたは私の無くした大事な部分を持って生きて欲しい」

「大事な部分?」

「そうだね、純潔・・・・・・かな。私は穢れてしまったから」

「穢れてなんてない、あなたは震えるほど美しいのに。男にも奪えない魂を持っているわ」

「そう?」

「そうよ、人の心を揺るがすほどの魂と踊りは、あなただけが持つ唯一のものよ」

「本当に?」

「本当にあなたは心も身体も美しいの!わかるまで何回でも言うわよ」

「そんな事言う人は初めてだよ。・・・・・・ありがとう」

アラファント・イージスは少し恥じらいながら微笑んだ。

「その笑顔は誰にも見せないでね」

リオンは嬉しそうに彼女を見た。

「何?」

「その笑顔は私だけに見せてね。私、独占力は強い方なの」

「ふふ、それはどうしょうかな」

「あら、他の人には見せないでよ。結構貴重よ、その笑顔は」

「ふふふ、じゃ、あんたと私が生涯かけて愛する人に捧げるよ」

「そうね、素敵な人が現れたら、私は二の次ね。それは許すわ」

アラファント・イージスとリオンは顔を突き合わせて笑った。二人は心から笑い合った。

朗らかなその笑い声は、傍で静かに座って眠る老人の顔を幸せにした。老人はアラファント・イージスの伴奏者の一人だ。一人で彼女達の声の中で夢現ゆめうつつで微笑んでいる。彼女達の声は老人のまどろみの中で永遠に続くかのようであった。


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