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そこに通り雨

作者: タマネギ

駅前のベンチに座っていた。

屋根があるので、

また降り出した通り雨が

通り過ぎるのを待っていた。


見上げると、空の半分は

青いままで、半分は濃い雲に

不気味に覆われ続けている。

時折、雨脚は強まった。


時間はまだあった。

雨を眺めていても、

ウトウト居眠りしても、

大丈夫なくらいに。


長い暮らしの中で、

時はこんな時も同じように

進んでゆくのか。ひたすらに。

同じには意味があるのか。


そこに通り雨があり、

そこに眠気があり、

そこに暮らしがあり、

迷いがあり、夢もあり。


また形あるものは

姿を変え、壊れ、崩れ、

そこに何かしら、

種を育み、芽を育み。


あの人と会わない時間、

その育みの時間に重なり、

今年ももうすぐ半年が

過ぎてゆく。夏になる。


通り雨は通り雨らしくなく、

止まないでいた。

もっと考えてみろと、

この時間を伸ばしている。


まあいいよ、考えても

しょうがないことだ。

この思いが天に通じれば、

山への道はすぐ晴れる。


それくらいの楽観で、

生きられるかぎり生きる。

泣きそうな顔をしていた

あの人の幸せを祈るために。


ベンチに座っていると、

いつしか体が冷えていた。

鞄の中から温泉用の

タオルを出して首に巻いた。


帰りに温泉街に寄ろうと

今朝は思っていた。

眠たかっただけなのに、

震えてそれを思い出した。


それからも、通り雨は

しばらく止まなかった。

日差しはあったのにね。

診療には少しだけ遅れた。

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