4日目 ツンデレちゃんの人間観察(日常パート)
ヤバい。
どうやら完全にやらかしたらしい。
現在、2時間目の最中なのだがまったく授業に集中できない。
何故なら。
朝からずっと九条凛音に睨まれているからである。
怖い……。
なんか普段より目力が強いというか、意識的に俺へ視線を集中していることがヒシヒシと伝わってくる。
これはもう完全に、昨日の対応をミスってしまったせいだろう。
俺はこのまま「つまんない奴」としてカースト上位集団のおもちゃにされて、その流れで周りからの評価も下がって流動的にジ・エンド。
ありえるな……そんな最悪の未来も。
そんなことを考えている間も、九条は俺を睨んでいる。
ポジティブに表すなら「見つめている」という言い方もできなくはないが、やはりそれは希望的観測だろう。
休み時間にスマホを眺めている時はもっと柔らかい雰囲気だから。
はぁ……どうしよう。
すっげぇこっち見てるな。授業中だけど黒板見ないで大丈夫?
……あー、そっか。たしか初日に勉強は得意って言ってたっけ。
↓
「ん、どうしたの那珂川? なんか元気ないねー?」
昼休み。
とある事情により心休まらないランチタイムを過ごしていた俺へ、亜桜綾香は不思議そうに問いかけてきた。
「いつもよりどんよりしてるけど……体調悪いの?」
「いや別に、なんともないさ」
「ほんと? あ、そうだ。お昼一緒に食べてあげよっか?」
「いやいい。亜桜と食べてると相槌ばっか打たされて食事が進まないから」
「もー、なにそれー。私と一緒にランチできるなんて、那珂川以外にとってはすっごく光栄なことなんだからね?」
「流石に「俺以外」は言い過ぎだろ」
亜桜が人気者であることは否定しないが、そこまで貴重な機会ではない……はずだ。
「しかしいつものことながら、お弁当おいしそうだねー」
「そりゃどうも。でもやらないからな」
「ねぇねぇ、卵焼き1個ちょーだい?」
「……聞いてた?」
ほんの1秒前の俺の言葉。
「いいじゃん、最近いくら食べてもお腹空くんだよ私ー」
「食べ過ぎると太るぞ」
「その分運動するから平気。はい、あーん」
「…………まったくもう。ほら」
俺は諦めて箸で卵焼きを取り、口を開けて待つ亜桜に与える。
「んー、おいしー! 那珂川の卵焼きはホント絶品だよー!」
「そりゃどうも。さぁ、食べたんだったらおとなしく退散し――」
「ねぇねぇねぇ、もう一個だけ、ね?」
「……いや、もう帰って?」