第06章 チャム王国誕生
六
「いいか、今から俺が、あの城目掛けて、リングの稲妻をぶっ放す。驚いて出て来た魔物どもを、スナイパー部隊で狙撃しろ」
そう言うと俺は城目掛けて、渾身の稲妻をぶっ放した。
ズガガガガガ~ン
光の柱が空から落ちて来た、そして、物凄い音と共に、城の半分が崩壊した。
生き残った魔物どもが、驚き城から飛び出して来た。
「よし、狙撃開始」
狙撃隊の狙撃が返しされ、スナイパーボウガンに射抜かれた魔物たちが、次から次へと谷に落ちて行く。
崩壊した城から、ケルベロスが走り出て来た。
「よっしゃ、サブ、行け」
ゴーレムのサブがケルベロスに走り寄り、渾身の一撃を入れた。
「キャイ~ン、キャイ~ン、キャイン」
サブの一撃をくらったケルベロスが、のたうち回る。
サブにもう一撃入れさせると、ケルベロスは、その場で失神した。
「よ~し、全員、突っ込め~」
皆が一斉に突進して行く。
「魔王を見付けたら、叫んで俺を呼べ、魔王は俺が倒す」
この時点で、俺の頭に描いて居たものは、八割方かたが付いた。
こちらの犠牲は1人も出て居ない。
「居ました~、魔王です~」
兵の1人が叫んで知らせて来た。
俺は急いで声の方に行くと、崩壊した城の瓦礫に挟まれた魔王が居た。
コイツが魔王か・・・
確かに強そうで悪い顔をして居る。
しかし、瓦礫に挟まれて動けないのだ。
勝った・・・俺は勝利を確信した。
今、動けないコイツにもう一度、渾身の稲妻をくらわせたら、さすがの魔王もタダでは済むまい。
「お前ら、下がって置け、今からコイツに稲妻をくらわせてやるから」
周りにいる部下たちを下がらせた。
「待ってください~、それだけはどうか、止めてください」
動けない魔王が叫んだ。
「お願いします、許してください」
魔王が懇願して頼んできた。
「お前、散々今まで悪さをして来たんだろうがよ、今更何言ってんだ」
「いや、お願いします。死にたくないです、助けて下さい」
俺は動けない者を殺すことに、別に何のためらいもない。
卑怯にも、非道にも、心は動かない男だ。
「いや、ダメだ。俺は魔王を倒すと決めて居るのだ」
「待って、じ、じゃあ魔王やめます。今から直に辞めますから。だから、もう魔王ではありません。倒す理由はないですよね、ですから、ね、ね」
「お前、恥ずかしくねぇのか?」
「ぜんぜん、ぜんぜん大丈夫よ。ですからお願いよ、命だけは助けて下さい」
もう、なりふり構わずと言った感じだ。
「お願い、ホントお願いだから。あなたの為なら何でもするわ。だからお願いよ」
コイツ、オカマか?じゃべり方がおかしくなってきている。
「何でもするのか?」
「するわ、今日からあなたの家来になるわ、アタイはあなたの人形よ、好きに遊んで構わない・・・」
そこまで言うなら助けてやるか、しかしコイツ自由になった途端に暴れたりしないだろうな・・・まぁ、その瞬間、稲妻をくらわしてやるけどな。
「解った、助けてやる。お前ら、皆でこの瓦礫をどかせてやれ」
「ちょっと待って下され」
俺の言葉を爺が止めた。
そうか、そう言えば爺は家族共々、村を焼かれたのだった。
それを考えると、やっぱダメだな。
「やっぱ辞めた、お前がやった事はひどすぎるぜ。この爺の村も、お前が全滅させたんだからな。もう、往生しろや」
「ち、違うは、アタイはそんなは事しない。ひ、東の魔王の仕業よ。アイツちょいちょいアタイの領置に悪さするのよ。ホントよ、アタイが怒るのを面白がってそんな事するのよぉ、お願いよ、信じてよ・・・」
俺が爺の方を向くと、爺は頷いた。
爺は信じてやるようだ。
そう言う事なら、俺も信じてやるか。
もう一度、兵たちに瓦礫をどけてやる様に命じた。
「ありがとう、アタイはドズル。あなたの人形よ。あなたの為なら踊りだって踊るわ。そう、アタイはダンシングドールよ、フフフ」
なんだコイツ、急に饒舌に成りやがって、調子がいいなぁ。
まぁ、結果オーライだ。
西の魔王の地位とその家来どもも、俺の配下に着いたと言う事だ。
此方の被害は殆んどないが、ドズルの方の被害は大きかった。
ドズルの兵は半分に減って居たが、それは仕方ない、コイツだって散々悪さはして来て居るのだから。
さてと、後は城のことだが・・・
ピアザ王との交渉には、ドズルとサブに行かせた。
俺が直接行っても良かったが、なんか弱い者いじめの様な気がしてな・・・
サブの話しだと、ピアザ王は快く承諾してくれたらしい。
ドズルの城の宝物を全部さらって、ピアザ城に入城した。
夢にまで見た城住まい、サイコーだ。
ヒュウイたち二百の兵は、このまま俺に付いて来ると言う。
どうでも良いのだが、コウシンも付いて来た。
ドズルの配下、五十の魔物も付いて来た。
ケルベロスは、俺が餌をやって居たら、なついて来た、まるでワン公みたいで可愛いものだ。
ピアザ国はチャム王国と名前が変わった。
そして、そこを拠点にして俺は西の魔王を名乗ることを、世界に宣言した。
チャム王国は、来るものは拒まず、争いは許さずの体制をとり、人間と魔物が共存する初の王国となり、前ピアザ国の時よりも、人口は四倍になり、西の地域一の大きな国に成った。
西の地域の首都となり、貿易も盛んにすることにして、この時はコウシンが初めて俺の役に立った。
ゴンタの兄も、チャム王国に幾つもの支店を置き、ゴンタと共に、随分と設けているらしい。
精霊女王のラフレシアも、俺の軍門に下って来た。
チャム王国に別荘を建て、優雅な暮らしをして居る。
爺ドルモアは、チャム王国に剣術の道場を開き、チャム家剣術指南役の地位につけてやった。
爺の諜報部隊も、爺から独立して、一機関として大きくなり活動している。
チャム王国のCIAだ。
ヒュウイはチャム王国の秩序を守る位置につけてやった。
警察庁長官みたいな者だ。
リリィもスナイパー学校を開き、手広くやって居る。
口うるさいだけあって、人に教えるのが好きなのだろう、フェアリーも沢山増えて居たので、チャム王国に住むフェアリーは、リリィの学校に入るのが必須条件になって居る。
ドズルには、参謀長官の地位を与えてあるが、裏でこっそりと、飲み屋街から、みかじめを取ったり、カジノを経営したりして、手広くやって居るが、これは、俺は黙認しているのだ。
しかし、ヒュウイが今度法の下摘発するのだと息巻いていた。
ピアザ国も、元のドズル城を修復して、それなりの国に成って居る。
貿易で多額の資金を得て居る、我がチャム王国から支援金を出してやったのだ。
他の魔王たちは、急速に発展して行く西の地域をどの様な眼で観て居るのだろうか?
今の所、なんの干渉もない。
四年に一度、魔王会議なるものが開かれるらしいので、その時に、ドズルを連れて参加して見る積もりだ。
その時の雰囲気で、戦争に成るのか、共存の道を選ぶのか、決める積もりだ。
元々考えるのが苦手な俺なので、出たとこ勝負で行くつもりだ。
他の魔王に遠慮するつもりもない。
可愛い女の子のフェアリーでも、今では俺も魔王なのだから・・・
第一部 了