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第05章 魔王退治の準備


 五


 ゴンタは、四十人分のスナイパーボウガンを十日で仕上げた、さすがだ。


 城から少し離れた場所に、駐屯地を作りあげた。


 ゴーレムのサブが森をザザーっとさらい、ゴンタが簡易な建物を建てた簡単な物だ。


 爺とヒュウイが兵の調練を始めて居た。


 その中から十人程の諜報部隊を、爺が作った。


 これからの時代、情報を制す者が世界を制すと言うのが、爺の口癖だ。


 ゴンタとコウシンは、やはり上手くやって居た。


 と言うより、コウシンが独りで喋って居るだけで、ゴンタは何一つ理解していないのだが・・・


 この中から誰か1人、生贄を出せと言われたら、俺は迷わずコウシンを差し出すだろうな・・・


 リリィは四十人の部下が出来て、とても嬉しそうにして居る。


 元々口うるさい女だから、人に物を教えるのが、嬉しくてたまらないのだろう。


 俺とサブだけが暇になった。


 サブに転生のことを聴いて見ると、今から五十年も前に、この世界に転生したと言う。


 俺の知っているサブは、四年前に交通事故で亡くなって居る。


 どうやらこの世界と、元の世界の時間軸にはずれがあるようだ。


「お前、人間だった頃より、ゴーレムで居る時の方が長ぇんだな」


「ホントっすね」


「俺たちの他にも、前世の記憶を持つヤツ居るのかな」


「どうっすかね、俺ほとんど洞窟の中に居たから・・・」


「人間に化けて外に出たりとか、しなかったのかよ」


「してないっすね」


「軽いなおまえ」


「ただ、転生してビックリしたっすけど、なんか頭の中には、宝箱を守らなきゃって、意思見たいなもんがあって・・・」


「それがこのリングかよ」


「そうっすね、でもそれ兄貴にあげたら、なんか身体が楽に成ったっす」


「ふ~ん、お前のキャラが変わったのもそのせいかなぁ」


「そうかもっすね」


 正義感が強かったサブだが、守る物が無くなったから、張って居た気が解き放たれて、こうなったのかも知れない。


 元々のサブはこんな感じだったのかもな。


「お前も苦労したんだな。俺も転生してビックリだぜ。まさかこんな弱っちいフェアリーに成るとはよ」


「でも今の兄貴は最強っすよ」


 考えてみれば、それもそうだ。


 最弱のフェアリーの俺が、今では魔王に挑戦しようって言うんだから、笑っちまうぜ。


 それから一月が立った。


 リリィのスナイパー隊は、まずまずの仕上がりを見せて居た。


 爺の諜報部隊は、すごい事に成って居た。


 皆、眼がくぼみ、死すれすれの訓練を積んだと言う。


 存在感を消して居るのだろう、後ろに立たれても気付かなかった。


 自在に気を操る事が出来る様だ。


 それに感化されてか、ヒュウイも兵の調練に精を出して居た。


 元々精鋭揃いだった兵たちが、団体行動が出来る様になって居た。


 ゴンタによる工作隊も兵の中から、手先の器用な者を二十人ほど集めて編成して居る。


 要らないのは、コウシンだけだ。


 しかし、軍師と言うことで、その全てを総括する権限は与えて居た。


 どこかで役立つこともあるかも知れないからな、多分・・・


 これで一応準備は揃った。


 そろそろ出かけるとするか、魔王退治に。


「コウシン、皆を集めてくれ」


「御意」


 コウシンの号令の下、全員が集まった。


 皆、良い眼をしている、真っ直ぐに俺を見つめてくる。


「そろそろ出発しようかと考えて居る」


 皆、どよめきはしたが、嫌そうな顔をする者は1人も居ない。


「明日、出発する。今夜の内に荷物をまとめて置く様に。今日はこれで解散する、ゆっくり身体を休めてくれ」


「おおおおおおおおう」


1人、二人、と雄たけびが上り、最後は全員が声を上げた。


 次の日、早朝から諜報部隊を先発させ、その後、半日遅れで全軍出発を始めた。


「諜報部隊を先発させるのが、宜しかろう」


 コウシンが進言して来た時は、先発させた後だった、やっぱコイツ、うぜぇ~。


 魔王の領置までは、行群で進んで二十日は掛るだろう。


 調練を繰返しながらだと、その倍は掛かるだろう、まぁ、ゆったりと行こう。


 西の魔王の領置に近付いて来ると、段々と森や木が少なくなってきた。


 岩場や沼地が有り、なんだか不気味な雰囲気だ。


 魔王を倒して城を奪うと考えて居た俺は、少しがっかりした。


 こんな雰囲気の場所はちょっと遠慮したいくらいだ・・・


 仕方ない、魔王を倒した後は、ピアザ国と交換して貰おう。


 嫌がるピアザ王の顔が目に浮かぶ。


 とにかくは、まず、西の魔王って奴を倒すことが先決だな。


 西の魔王の領置に入って十日目にしてやっと、城の様な物が遠くに見えて来た。


 近づいてみると、いきり立った崖の上にその城はあった。


 城と俺たちの間には、谷があり、自然の堀の様に成って居た。


 城もめっちゃ不気味な雰囲気を醸し出している、やっぱピアザ城と変えて貰おう。


 その頃になって、先行させていた諜報部隊が戻って来た。


 報告によると、城の中に魔物は百匹ほど居ると言う。


 中でも西の魔王にぴったりと寄り添うようにしてケルベロスが幅って居ると言う。


 コイツは獰猛で、気を付けなければ成らないだろうな。


「サブ、お前はケルベロスをやれ」


「オッケ―っす」


 相変わらず軽いな。


「よっしゃ!いっちょやってみっか」


「お待ちください、何か策をお考えですか」


 コウシンが言ってきた。


「ん?何かあるのか」


 珍しくコウシンが自信満々で伝えて来た。


「御意、私が観るに、ここから城までの道はあの橋一つ。まずはあの橋を破壊して、出て来た魔物をスナイパーで狙い撃ちするのが、宜しかろう」


「ほう」


 たまには良い事を言うではないか、ウザイだけではなさそうだ。


「よし、まずはその手で行こう。で、その後はどこから城に入るんだ」


「・・・」


 コウシンは黙って居る、策がないのだ。


 やっぱコイツ使えねぇ・・・



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