第04章 新しい軍団
四
衛兵たちに囲まれた。
逃げ道はない。
「お前らバカじゃね」
俺は思わず笑いそうになった。
「なにっ」
ピアザ王がいきり立った。
「俺たちは、魔王にチャレンジするんだぜ?それくらい強えんだぜ?お前ら如きに捉えられる訳ねぇだろ」
今頃になって衛兵たちが後退りしだした、全くバカバカしい・・・
「予行演習だ、いっちょ、暴れっか」
「ま、待ってくれ、いや、待って下さい」
ピアザ王が土下座をしていた。
「あなた方は、それ程お強いのですか?自信がおありなのでしょうか?」
「知らねえよそんな事。しかし自信が無ければチャレンジなんかしねぇだろ」
「確かに・・・しかし西の魔王に勝てたとしても、その後の魔王たちも居るのですよ。その事もお分かりですよね」
ピアザ王が聞いて来た。
「そんなもん、魔王たちの力は拮抗してんだろ。1人倒せれば、後は同じじゃねぇか」
ピアザ王がキョトンとした。
「あれ?俺の計算、間違えてるか?」
後ろの仲間たちを見たが、誰も俺と眼を合そうとしなかった。
「勝負は時の運だぜ、やらねえ内から後の事なんか考えられっかよ」
ピアザ王が泣きそうな顔になった。
「そんなぁ・・・なんの戦略も確信も持たないのですか?」
「うるせぇなぁ、悪いかよ、気合があんだよ気合が・・・」
我ながら苦しい言い訳だが、男は度胸だ、身体は可愛い女の子のフェアリーだが、心は男だ、いや、漢だ。
今更引くわけには行かない。
「それでは私の兵を連れて行って下さい、手練れの者を厳選します。ホント負けられては困るのです、お願いします。国家の存亡がかかって居るのですから・・・」
ピアザ王が懇願しながら訴えて来るので、仕方なく受ける事にした。
ピアザ王は、二百の手練れの兵と、軍師をよこして来た。
二百の兵を束ねる戦士ヒュウイと、軍師コウシンが俺の前にやって来た。
「私はヒュウイと申します。今日から私の主君はチャム様であります。どうかお見知りおき下さい」
うむ、このヒュウイは中々礼儀正しい、腕の方も確かだと爺が言って居た。
達人は達人を知ると言うヤツだ。
「我が名はコウシンと申します。古今東西あらゆる軍学を学び、星の動き、または風水を読み、地学に始まり、人知天命を受け、数理に明るく、世の太平を望み、悪を・・・」
「わっ、ま、待て、もう解ったから」
なんだぁコイツ、めんどくせ~。
コウシンはともかく、ヒュウイの方は拾い物だ。
「ヒュウイ、二百の兵の中で弓が得意な者は居るのか」
「はい勿論。四十人ほど揃えています」
「そうか、じゃあその四十人は、リリィに預けるとしよう」
「解りました、すぐに手配します」
そう言ってヒュウイは走っていった。
なんと動きの良いヤツだ、使えるぜ。
ゴンタに、スナイパーボウガンを早急に作らせて、リリィにスナイパー軍団を指揮させることにしよう。
「殿、よろしいか」
まだいたのか、コウシンが発言した。
「なんだ」
「四十人の弓の部隊を編成して、リリィ殿に預け、リリィ殿の様なスナイパーボウガンを修練させるのが宜しかろう」
なんだコイツは?俺の考えを繰返して居るだけじゃねぇか、めんどくせ~。
「解ってるよ、そんなこと」
「御意」
めんどくせ~なぁ、コイツ、ゴンタに預けるか。
「お~い、ゴンタ、ちょっと来てくれ」
ゴンタが走って来た。
「おら、来た」
「早速で悪いが、四十人分のスナイパーボウガンを作ってくれ。それから、このコウシンをお前に預ける事にするから」
コウシンがゴンタに挨拶を始めた。
「ゴンタ殿、我が名はコウシン。古今東西あらゆる軍学を学び・・・」
「おら、わかんねぇ」
ゴンタとコウシンが離れていった。
あの二人はきっと良いコンビになるだろうと思う、多分な・・・
俺はこれからの事を考えた。
魔王とは、いったいどんなヤツなのだろうか。
魔王と言うだけあって、やっぱ強いのだろう、あのゴーレムのサブが、ビビって居るくらいだから相当なものだろう。
リングのアイテムだけでは、勝てないかも知れない。
やはり仲間の協力は必須条件だろう。
まぁ、やってみないと分らない、とにかく気合と根性だけは充分にある。
それで良しにしよう、あとは出たとこ勝負があるだけだ。
俺は考える事をやめた、と言うより、元々考えて行動するタイプじゃないからな。
とりあえず、二百の精鋭はありがたい。
ゆっくりと調練する事にしよう。
ピアザ王も腹を決めたと言う事だしな。
そう思ったら、なんか腹が減って来たな。
城に戻って、なんか旨い物を食わして貰おう。
決起会もかねて、宴でも開いて貰うか。
「お~い、皆、集合~」
二百人以上が一堂に会すると圧巻だな、コイツらが皆、俺の子分だと思うとワクワクしてくるな。
「今から城に戻って決起会と行こうぜ」
皆が嬉しそうな顔に成る。
そんな顔を見て居ると、こっちまで嬉しくなるぜ。
「よし、サブ、お前ゴーレムの恰好で一足先に城へ行って来いよ、宴の用意をしとけってよ」
「オッケ―っす」
サブの後姿を見ながら、ピアザ王はビックリするだろうなと思ったら笑ってしまった。