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第03章 パーティー


 三


 リリィのスナイパーの腕が、百発百中に成って居た。


 近くに人間の町があり、魔物の肉を売るとかなりの値が付いた。


 ゴンタが新しい毒を調合して、毒がささった部分だけを除けば、後の肉には殆んど毒の影響が無いのだ。


 リリィもそれを心得て居て、一発で急所を狙って居る。


 リリィが獲物を倒し、ゴンタがせっせと町に売りに行く事を繰り返し、かなりの銭を貯める事ができた。


 ゴーレムのサブは、人間に化ける魔法を覚えて居た。


 かなりの大男だが、一応人間の姿なので、人間の町にもこれで出入り出来るようになったのだ。


「殆んど私の稼ぎで飲み食いして居るんだからね、感謝しなさいよ」


 人間の町の酒場、リリィは得意げだった。


 確かにリリィの言う通り、コイツが仕留めた魔物の肉を売った金で飲み食いしている、言いたいだけ言わせてやる。


 毎日大量の魔物の肉を持ち込んで来る俺たちは、ちょっとした有名人に成って居た。


 声を掛けて来る町人も少なくない。


「ダンナたちのパーティーに、儂も混ぜてくれんかね」


 隣で飲んでいた、爺ちゃんが話しかけて来た。


「なんだぁ爺ちゃん、寄って居るのか」


「酔っては居らんよ、アンタらただのハンターじゃあるまい」


「なんで分かんだ」


「話の中に魔王とか出て来るもんでね、もしやと思ってね、狙って居るのかね?」


「ほう、だとしたらどうなんだ?」


「ほほほ、爺にそんな怖い顔をするもんじゃないよ・・・だとしたら儂を雇って貰いたいのじゃよ」


「雇う・・・ほう、で、爺ちゃんは何ができんだ」


「居合術を少々、それと魔法じゃ」


「魔法使い?それに剣術が出来るってかぁ・・・面白れぇ」


「剣術も魔法も共に気を操るのでな、基本は同じ様なものじゃ」


 爺は名をドルモアと名乗った。


 日本刀の様な物を持つ魔法使いだ。


 話しを聴くと、爺の住んで居た村は、その昔、魔王に焼き払われたと言う。


 家族や村人全員が殺され、武者修行の旅をしていたドルモア一人だけが残された。


 まだ若かったドルモアは、復習に燃え、一度魔王と戦ったことが有ると言う・・・


 しかし、魔王の強さに圧倒され、命からがら逃げ出した、それほど魔王は強いと言う。


「儂ももうこの歳じゃ、今回を逃せば次の機会は二度と巡って来んじゃろうて・・・」


 ドルモアはそう言って笑った。


 目的は違うが、魔王を倒すと言う利害は一致した、断る理由は一つもない。


 金は幾らでもリリィが稼いでくる、今ではリリィは俺にとってのクレジットカードとなったのだ。


「よっしゃ、爺ちゃん、雇った」


 このパーティーのリーダーは俺だ、独断と偏見で俺は爺を雇う事に決めた。


 他の皆も異存は無いようだ。


 その日は歓迎会も兼ねて、朝まで酒場で飲み明かした。


 爺は化物の様に飲んだが、次の日にはケロッとしている、俺たちとは年季が違うのだそうだ。


 俺の記憶ではサブが最後まで付き合って居たが、今日のサブは二日酔いでホテルで寝込んで居る。


「爺ちゃん、取りあえず、腕前を見せてくれよ」


 町の外へ出て、俺は言った。


 ちょうど向こうから、ゴブリンがやって来たのだ。


 ゴブリンはやる気満々で、一直線にこちらに向かって来る。


「ほほほ」


 爺は笑いながらゴブリンに近付いて行く。


 そしてすれ違った。


 ただすれ違っただけの様に見えたが、ゴブリンの身体は二つに割れて居た。


「リリィ、今の見えたか?」


「み、見えなかったわ」


 ゴンタも横で眼を丸くしていた。


「や、やるじゃねぇか爺ちゃん」


 これは思いがけない拾い物だ。


「こんなもので良いのかね、魔法の方も見るかね」


 爺の使う魔法は、殆んどが、回復系の魔法だった、これも都合が良い。


「爺ちゃん、大合格だぜ。雇うとして、代金は幾らだい?」


「別にそれほど要求するつもりはないが、まぁ爺一人分の衣、食、住、さえ約束してくれれば充分じゃ」


「おっしゃ、それは約束しよう」


 爺の話しでは、魔王の住む城には、強力な魔物たちも居ると言う。


 もう少し手練れの仲間を集めたいところだが、相手は魔王だ。


 そう都合よく仲間が集まるのだろうか?


 取り敢えず、サブの体調だ良く成り次第、この町を出発することにした。


 しばらくは、魔物が出てきて、それを倒すと言う単調作業が続くのだが、その部分はカットする事にする。


 旅の途中、ゴンタがドルモアに剣術の稽古を付けて貰って居て、ゴンタもかなりの達人レベルにまでなって居た。


 俺もこのリングを、かなり使いこなせるようになっていた。


 大きなものは前も話したように、一山吹き飛ばしてしまう程強力なものから、小さなものはタバコに火をつけるものくらいまで調節出来るように成っていた。


 あ、言い忘れて居たが、この世界にもタバコが有ったのだ。


 それは娑婆(前世)の様なものでは無く、キセルですうようなものだ。


 ゴンタにフェアリー用の小さな物を作って貰ったのだ。


 俺は段々と、この世界の事が好きになって来た。


 俺たちは、凄腕パーティーと言う事で、かなりの有名人に成って居た。


 仲間に成りたいと志願して来る輩もいたのだが、テストをして、ふるいにかけると、誰も残らなかった。


 数より質を取る事に決めたからだ。


 俺たちの移動手段はサブだった。


 ゴーレムのサブの片に乗って、移動するのだ。


 そうすれば、弱小の魔物は寄って来ないから、無益な戦いはしないで済む、一石二鳥とはこの事だろう。


 一度、ドラゴンが襲って来たことがあったが、サブはワンパンで倒した。


 コイツってこんなに強くなっていたのか・・・発言には少し気を付けよう。


 そんな単調な旅が続いて居た時だった。


「待たれよ、そなた達が凄腕のパーティーであろうか」


 馬に乗った騎士団に呼び止められた。


 町が近づいて居たので、ゴーレムのサブは人間に化けて居た。


「なんでございましょうか」


 爺が対応をする。


 パーティーの中で唯一の人間なので、対応は爺がすると決めて居るのだ。


「我が王がお会いしたいと申して居ります、どうかお越し頂けないであろうか」


 我が王とは、次の城下町ピアザ国の王様のことだろう。


 まぁ、この段階で大体の予想は付く、俺達の名前が有名なので、魔王を倒してほしいとお墨付きを下したいのだ。


 そうする事で、俺たちはピアザ王の下、魔王を倒すことに成り、もし倒すことが出来ればピアザ王の名も上る。


 どうせそんな事だろうと予想してピアザ王に謁見すると、話しは逆だった。


「魔王を倒す事は、辞めて貰いたいのだ」 


 開口一番、ピアザ王が言った。


 話しはこうだ、今の情勢は、東西南北の魔王が拮抗して居て、バランスが取れて居るのだ。


 これが崩れてしまうと、領置を奪おうとする他の魔王たちの間で、戦争が勃発してしまう恐れがある。


 特にこのピアザ国は、西の魔王の城から一番近い国なので、戦争が起れば一番の被害をこうむることになる。


「出来れば魔王には、障らないで貰いたい」


 ピアザ王は懇願する思いで伝えて来た。


 魔王を刺激するだけでも、なにか良くないことが起きるかも知れないと恐れて居る。


「余は魔王を退治に来る者どもを、ここで見張って居るのだ」


 そう言った後ピアザ王はこう続けた。


「もしも余の言う事が聞き取れないと申すなら、捉えて牢に入れる事に成るが、それでも良いのか?」


 ピアザ王の脅しとも取れる言葉に、皆、黙って居た。


 リリィとゴンタが俺の顔色を窺って居る。


「よし、解った。皆の者、この者どもを地下牢に叩き落とせ」


 ピアザ王が叫んだ。



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