表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

第02章 旅の始まり


 二


 この世界に魔王と言われる奴は、四体居るらしい。


 東西南北に別れて、お互いに権勢し合い、つるむ事無く均整が取れて居て、どれか一つが欠けると、残りの三体の魔王が国盗りに乗り出して、大変な事に成ると言う。


 均整が取れて居ると言うことは、皆、同じレベルと言うことだ。


 一体倒せるなら、残りの奴も倒せると言う事だ。


 何も問題ない、俺はそう考えていた。






「ちょっと、マジで魔王を倒すって言ってんの?あんたバカなの?」


「うるせぇなぁ、じゃあ、お前は付いて来るなよ」


「無理無理、こんなとこで一人になっちゃたら、私死んじゃうじゃない。嫌よ、付いて行くから、付いて行かせて下さい~」


「ふん、サブは来るだろ」


「まぁ、もうここに居る理由はないし、オッケーっす。行きます」


「軽いなぁ、お前そんなキャラだったっけ」


 こうして俺たちは、魔王を倒すべく旅に出たのだ。


 俺たちの居る場所は西の国なので、とりあえず狙いは西の魔王だ。


「リリィ、お前何か攻撃できんのか?」


「なによ、いきなり、こんな可愛いフェアリーが、攻撃なんて出来る訳ないじゃない」


「じゃあ、足手まといだなぁ」


「待って、ちょっと待って、今考えるから、置いて行かないで」


「今考えるって・・・」


「ゆ、弓矢ならやったことあるわ、一度だけだけど・・・」


「弓矢って、フェアリーの大きさの弓矢だったら、矢なんて針みたいなもんだろ。やっぱ足手まといだよな」


「なによ、自分だって同じフェアリーじゃない。ちょっとリングを手に入れただけで、もう天狗ですか?そのリング私に貸しなさいよお・・・弓矢だってね、矢の先に猛毒を塗り付ければ、立派な攻撃になるんだからね」


「ん?毒矢か・・・リリィ、お前悪い事考えるなぁ」


「あんたに言われたくないわよ」


「いけるかもなぁ・・・サブ、この世界にボウガンってあるのか?」


「そんなもんは無いけど、この先にドワーフの村があるから、もしかしたら作れるかも知れないっすよね」


「ドワーフって言やぁ、あれだよな、物作りが得意な種族?」


「そうっす」


「なんかトントン拍子に進んで行くなあ、まるで小説みたいだぜ」


 そうして俺たちは、ドワーフの村へ向かう事になった。


 ドワーフの村へ入ると、皆、サブを観て目を丸くした。


 そうだった、サブは魔物なのだ。


 ゴーレムがいきなり村に入ってきたのだ、ビックリするはずだ。


「サブ、お前は目立ち過ぎるぜ。ドワーフ共が怖がって居る。村の外で待機しとけよ」


「それもそうっすね、解りました」


 サブが段々と軽いキャラに成っている様な気がするのだが、アイツあんなキャラだったかなぁ・・・


 まぁいいや、サブを待機させてリリィと二人で村に入った。


 さすが物作りが得意な種族だ、色んな店がある、村と言うよりは、町だ。


 その中で一番大きな店に入った。


「お、珍しい。可愛いフェアリーちゃんが二人でどうしたの?」


 店の奥から職人風のドワーフが声を掛けて来た。


「あの~、ちょっと作って貰いたい物があるんだけど・・・」


「物作りは私らの仕事やからね、どんな物を作りやしょう」


 俺はリリィの武器として、スナイパーが持つライフルの様なボウガンを、絵図を書きながら説明した、ちゃんとスコープが付いたヤツだ。


 ドワーフのおっさんは、ふ~んとか、なるほど~とか言いながら、最後は任せてくれと言う、頼もしい返事が返って来た。


 ついでに矢に毒を塗りたいと言ったら、サソリムカデとか言う猛毒が、ちょうど入荷したばかりだと言う小説の様な展開になった。


 三日後に完成品を取りに来てくれと言う、じゃあ代金はその時にと約束して店を出た。


「あんたお金なんて持ってんの?」


 店を出ると早速リリィが聞いて来た。


「いや、ないよ」


「じゃあどうすんのよ?あんたバカ?」


「フフフ、踏み倒すに決まってんだろ。商品を取りに行く時はサブに行かすんだよ。さすがにゴーレムからは、銭金取れないだろ」


 俺はこんな事が得意なのだ、良い子は絶対に真似しないでくれ。


「わ、悪ぅ~、あんた悪ね、ホント」


「なんだよ、お前の武器だろ。じゃあお前が金払うか?」


「こ、今回は特別に目をつぶって置くわ」


 お前だって充分悪いじゃねえかと、そう思ったが言わずにおいた、面倒臭いからだ。


「そんなことより、腹減ったぜ。どっかホテルに宿泊しようぜ。後払いでよ」


 今度は、リリィは何も言わなかった、大人しく付いて来る気だ、共犯成立。


 サブは俺にとってクレジットカードのようなものだ。


「何でも好きなの食えよ」


「いいの、ねえ、ホントに良いのね」


 リリィは大食いだった。


 こんなちっこい身体の、いったいどこに入って行くのか解らないくらい、食って居る。


 俺も久し振りの食事だ、おまけになんとビールもあるのだ。


「でもサブちゃん、なんだか可哀そう」


 リリィが思っても居ない発言をした、コイツにそんな感情は無いことは解って居る。


「心配すんなよ、飯が不味くなる。どうせ今頃、村の外で岩でも食ってるよ」


「ま、それもそうね。私ずっとこのホテルで暮した~い」


「展望浴場が有るらしいぜ。後で入りに行こうぜ」


「ちょっとぉ、チャムのエッチ。あんた心は男なんでしょ。やだぁ~」


「おまえバカか、俺の身体も女の子なんだぜぇ。べつにお前の身体なんか見て欲情するかよ、冗談じゃねえ」


「ホント、じゃあ行こ、行こ、展望浴場」


 コイツがこんなに喜ぶとは思わなかった。


 たまには贅沢も悪くはねえ。


 あっという間に三日が立っちまった。


「リリィ、サブを呼んで来てくれや、踏み倒し、いや、勘定の時間だ」


「はい、わかりましたぁ」


 こういう時のリリィは物分かりが早い。


 あっという間にサブを連れて来た。


 ゴーレムの力は凄まじかった。


 村が凍り付いた様になり、どこに行ってもお代は結構ですと来た。


 リリィのボウガンも、無料でむしり取ってきやがった、さすがは俺の弟分だ。


 ボウガンの出来は素晴らしい物だった。


 射程距離は一キロもあり、自動で矢がセットされる仕組みで、毒は猛毒、そこら辺の魔物だったら、一秒で殺す。


 あとは、まぁリリィの腕次第ってとこだ。


 リリィはいっちょ前にサングラスなんか掛けやがって、まるでスナイパー気取りだ。


 このドワーフのおっさん腕が良いなあ、仲間にしたいくらいだぜ。


「サブよう、ドワーフのおっさん、ちょっと連れて来いよ」


 サブはよく言う事を聴く、娑婆で(前世)散々鍛えてやったからな。


「えええ、私を魔王退治に連れて行く?」


「なあ頼むよ、おっちゃん、来てくれよ。おっちゃんみたいに腕の良い鍛冶屋がどうしても要るんだよう」


「はぁ、そない言われても店を空ける訳には・・・そや、そない言うなら私の弟を連れてってやって下さいな」


「弟?」


「はい、頭は少し抜けてますが、腕は私以上です。今回のお嬢ちゃんの自動弓矢も、殆んどが弟作です。弟にして下さい」


 なんか上手い事話を反らされた感が有るけど、一応面談してみるか。


「おらゴンタだ。魔王退治行く」


 ホントちょっと抜けて居るなぁ、大丈夫かこんなので・・・


「おら、がんばるべ」


 本人は至ってヤル気はあるみたいだが、おつむの方がなぁ・・・


「解った、ゴンタ、一緒に来い」


「おら、ホントがんばるべ」


 いざ連れて行ってみると、ゴンタは器用人だった。


 力もそこそこあるし、野宿をする時も、そこら辺に落ちて居る木や石やらで、ちゃっちゃと寝床を作るし、料理も出来る。


 ただちょっと頭が弱い・・・


 頭は弱いが言う事は良く聴くし、可愛げもある。


 俺はゴンタの事が好きになった。


 あと、これは俺のことだが、旅の途中で一度リングを使ってみた。


 魔王に会う前の予行演習ってヤツだ。


 ビックリした。


 軽く一撃の稲妻で、山が一つ消えた。


 これなら魔王を倒せると確信した。


 リリィのスナイパー精度も上って来ているし、結構な勢力になるだろう。


 ゴンタは斧を二本同時に使う、二刀流と言うヤツだ。


 サブは何も言う事がない、一撃のパンチで大きな岩も粉々だ。


 なかなか最高のパーティーだ。


 魔王の城まではまだまだあるが、それまでにまだ何匹か集まるだろう。


 魔王を倒して俺はその城に住むつもりだ。


 魔王の代わりに魔王に成っても良いと思って居る、そうだ、贅沢三昧の生活を送りたいのだ・・・


 待ってろよ魔王よ、俺がお前に成り替わってやるからな。


 それまで待ってろよ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ