04
大歓声の中、観客に向かって手を振る男がいた。
その男は、マスク・ド・ジェントルだった。
ジャスティスの攻撃は失敗に終わり、逆に、手痛い反撃を喰らう事になった。
コーナーに投げられたジェントルは、其処に激突することは無く。
ロープを使った反撃によって、ジャスティスを倒したのだ。
喝采に飽きたジェントルは、倒れたジャスティスに近づく。
「さて、止めを刺しましょうかね」
その時、会場に新たな歓声があがった。
「なんと、本日2人目の乱入者が現れました」
ジェントルは、目的であった行為を中断し、乱入者を見る。
マスク・ド・ファイトには、暗黙のルールがある。
乱入者が現れた場合、一切の行為を中断し、その者がリングインするのを見届けなければならない。
ファイティングロードをゆっくりと歩く人物。
その身体付きは、引き締まっているが、華奢に見えるほど細かった。
鬼をモチーフにした面を付け、黒いマントを羽織った男。
顔は分からないが、幼さを感じさせる印象があった。
「次の乱入者は、正体不明のマスクマン。人呼んで、マスク・ド・マーベラスだ~!」
大歓声の中、彼はゆっくりと花道を歩く。
そして、中央に差し掛かったあたりで一気に駆け出すと、高く跳躍し、コーナーポストに降り立つ。
彼は、羽織ったマントを脱ぎ捨てて、その美しい身体を惜しげもなく曝け出した。
会場に黄色い歓声が響き亘る。
彼は、興味なさ気に手を上げると、倒れたジャスティスを抱き起こす。
「大丈夫ですか?」
「ああ、なんとかな」
彼は、ジャスティスの傷の具合を確かめようと、その身体を艶めかしく撫でる。
その場面を、会場の女性たちがうっとりと眺める。
「おいおい、止めてくれよ。もっと、普通に触れないのか?」
「すいません。余り強く触ると痛むかと思いまして」
「そうか、気を使わせて済まない」
「いえ、貴方が無事でよかった」
彼は、ジャスティスに肩を貸して、コーナーへ運ぶ。
「ジャスティスさん。貴方では、彼とは相性が悪い」
「どうやら、そのようだね」
ジャティスは、爽やかな苦笑いをする。
そんなジャスティスに、彼は笑顔を向けて言う。
「あいつは、僕が倒しますよ」