表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

03

 スポットライトを浴びた紳士は、恭しく、会場の観客たちに礼をする。

 その姿を見た実況が、興奮した声をあげる。


 「おっと~! これは、乱入者の登場です」 


 マスク・ド・ファイトでは、自主的な乱入が認められている。

 もっとも、それが、会場を沸かせるものであればと言う条件付ではあるが。


 「しかも! 今回の乱入者は、あの、有名な殺人鬼。現代のジャック・ザ・リッパー。殺人紳士・マスク・ド・ジェントルだ~~!」

 

 マスク・ド・ジェントルは、未だ、逮捕されていない犯罪者である。

 マスク・ド・ファイトに勝ち続ける限りは、新警察は逮捕権を持たない。

 この新法律を利用して、悪事を働き続ける組織がある。


 彼らは、人類解放軍と名乗っている。

 マスク・ド・ジェントルは、その幹部、悪鬼12天の一人でなのだ。

 当然に組まれた好カードに、会場は沸きあがる。


 「人気急上昇のヒーローに、死神の鎌が振り下ろされる!」

 ジェントルは、その場から高く跳躍してリングに降り立つにと、会場に向かって礼をする。

 会場に、今までに無い程の歓声が上がった。

 

 この場では、例え犯罪者であろうとも、強ければ、敬意が向けられる。

 マスク・ド・ファイトとは、そういった競技なのだ。


 「英雄には、乱入を拒否する権利はありまん。いや、たとえあったとしても、それはしない。それが、英雄なのだから!」


 解説の煽りにあわせて、ジャスティスは会場に闘志をアピールする。

 いま、今夜のメインマッチが始まったのだ。


 カーン!


 ゴングと共にジャスティスが仕掛ける。

 その逞しい身体を躍動させて回転しながらキックを放つ。

 ローリング・ソバットだ。

 豪快な風切り音をあげて、そのキックはジェントルを襲う。


 「ああ~っとぉ! これは、どうした事でしょうか? ジャスティスが空振りだ~」

 その後も、ジャスティスは果敢に攻める。

 キック、パンチ、パンチ、パンチ、キック。

 しかし、その全てが、ジェントルには届かない。


 それどころか、ジェントルはかわす素振りすらも見せなかった。

 「ん、ん~。どうしたんですか? 英雄? 私は、一歩も動いてませんよ?」

 ジェントルは、ジャスティスを挑発すると、大振りの攻撃で反撃を開始する。


 「おっと! 今度は、ジェントルの反撃だ~」

 ジャスティスは、その攻撃を回避、若しくは、ガードをしようするが、そのことごとくがヒットする。

 「どうしたんですか? こんな大振りも避けられませんか?」

 ジャスティスが膝をつくが、その攻撃は止まらない。


 「ジャスティス、滅多打ちだ~! このまま、勝負は決まってしまうのでしょうか?」


 「しかし、タフですねぇ。流石は英雄。と、でも言うのですかねぇ? しかし、これは、どうでしょうか」

 ジェントルが拳を開き、その手を伸ばす。

 そして、それを、一気に振り下ろした。


 会場から、悲鳴があがる。

 ジェントルが振り下ろした腕が、ジャスティスの身体を切り裂く。

 これが、彼が現代のジャック・ザ・リッパーと言われる所以、【切り裂く腕】だ。


 「これは残酷! ジェントル、攻撃の手を緩めません」

 数度の攻撃により、裂傷を負ったジャスティスは、遂に、リングへと沈んだ。


 「ふふふ、それでは。止めを刺してあげましょう」

 ジェントルは、ジャスティスの身体に深々と自らの腕を突き刺して、愉悦に浸る。

 しかし、それは長くは続かなかった。


 その、突き刺さった腕をジャスティスが掴んだからだ。

 「この瞬間を待っていたぜ。お前は、止めを刺すときに必ず腕を突き刺す。今まで殺された英雄の死は、無駄では無かったって事だ」

 「く、馬鹿な!」


 その時、ジャスティスの仮面が輝く。

 「行くぞ! 【リミット・ブレイク】」

 ジャスティスは、ジェントルの腕を掴んだまま、高速で回転する。

 「腕を掴まれてしまえば、避けることは出来まい。このまま、コーナーポストにぶつけてやる」

 

 ジャスティスは、狙いを定めてジェントルをコーナーポストに投げる。

 流石のジェントルにも、余裕の顔は無かった。

 この勢いでぶつかれば、間違いなく即死だろう。

 遂に、激しい戦いは決着を迎えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ