庭園
楽しんで頂けると嬉しいです!
今日もいい天気。あー、今日も幸せ。庭園の奥にあるベンチで恋愛小説を読むのは良いものですね。半分は寝てしまうんですけど。
それに毎日楽しみが増えたような気がします。
あーまた睡魔が近寄ってきました。もう、目を開けてられないです。
「フレア。可愛い寝顔ですね」
ほっぺたがくすぐったいです。ちょっと触らないで下さい。優し過ぎてくすぐったい。
はっ?目の前に婚約者候補様が?あぁ。そうでしたね。もうこんな時間ですか。
やばいです。寝顔なんて見せてしまいました。
何もなかったように横に座るのですね。逆に私が考え過ぎて恥ずかしいです。
「これ。読みました。次は何を貸してくれますか」
あぁ、昨日貸した本ですか。そんな素敵な笑顔で見ないで下さい。
手にお持ちなのは『鬼畜王子に愛されて』と表紙がなんとも言えない。
昨日は変な感情が渦巻いて思わず渡してしまった代物です。
何故でしょうか。笑顔でその本を持ってる婚約者候補様を見ると……カオスですね。
「とても、面白かったですよ。特に最後に鬼畜王子が主人公に……」
待った!思わず婚約者候補様の口を手で塞いでしまいました。しかし、しかしですよ。それ以上は口に出さないで下さい。心の中で言うのです。
口に出して良い言葉ではありません。
そう。心で感じるのです。
「焦ってるフレアも可愛いですね」
からかわれたー。クスクス笑う婚約者候補様を横目で睨むフリをします。
婚約者候補様は本を貸した日から毎日私の元に来ているのです。
ちゃんと本を読んで感想までくれるのですが、婚約者候補様から話される内容がなんか恥ずかしく聞けません。
それに、婚約者候補様を待ってしまっている私がいます。婚約者候補様と話す時間が愛おしく思っている自分が恥ずかしくて死ねる。
まぁ、死にませんが。まだまだ読みたい本がいっぱいあるので死ねません。
「つ、次は何が良いでしょうか」
「あ、庭師の恋物語の新しい本は読み終えましたか?」
「昨日終わりました。では、今お持ちしますね」
庭師と令嬢の『令嬢は庭師と恋の花を咲かせる』第3巻は良い話でした。あんなに号泣したのは久しぶりでした。隣国の王子の登場ですれ違う2人。
違うそうじゃないのよ。勘違いしてるだけだから。何回そう叫んだか。
読み終わった後も余韻に浸って寝不足で今さっき、その分の睡眠をとりました。
「俺も一緒に行っても良いですか?」
笑顔が眩しい。綺麗な顔に言われると私が断れない事知っちゃいましたね。別に隠してはいませんが。ですが、乙女の部屋に行きたいとか。私が死にたいですけど。
「一緒に行ってもいいのですが中には……」
「もちろん部屋には入りませんよ。ただ、フレアともっと一緒に居たいって思ってしまって」
また、さらっと恥ずかしい事をいわれました。
誰ですか?いつか慣れるって言ったのは。全然慣れないじゃないですか。
婚約者候補様を直視出来なくて目を逸らしてしまいました。でも、本当に恥ずかしくて、全身真っ赤になって口走ってしまいました。
「わ、私のどこがいいんですか?」
待って私。なんて事を口走ったのですか。聞きたくて、聞きたくて仕方なかった。だけど、聞けなかった言葉。
これはヤバイです。逃げようとベンチから立ち上がり、逃げようとするとガシッと腕を掴まれました。そっと婚約者候補様を見ました。
今の聞かなかった事に……出来ませんね。
そんな嬉しそうな顔をしてこっち見ないで下さい。心臓が持たないですから。
「嬉しいですよ。俺に興味持ってくれたんですよね」
違いますと、言っても信じないですよね。
私を見る瞳が優しくて目が離せないのは、誰かの陰謀ですか。婚約者候補様の陰謀ですね。
「俺に興味持ったから、俺の考えが聞きたいんですよね。フレアは興味ない物に疑問は持たないでしょう?」
確かに、私が興味あるのは自分が他人と関わらないように、如何に幸せに暮らすかでした。別に他の人に自分がどう思われようと関係ないです。
もう、隠しても婚約者候補様にはバレバレですよね。
婚約者候補様は私の前に立っている。
これから何が始まるんですか。チョット待ってください!心の、心の準備ができてないです。だって、今すごい顔してると思います。
「この屋敷に遊びに来た時に、ここでフレアを見たんです。フレアが幸せそうに本を読んで、ころころ変わる表情が愛らしくて、ここで見る度に好きになりました。フレアと一緒に過ごしていると困った顔や驚いた顔、恥ずかしがってる顔が可愛くて仕方ないです。もっと好きなりました」
どこぞの王子様がしそうな、跪き私の手を取る。
ど、どなたか絵描き様はいらっしゃいませんか?私はいいので婚約者候補様を描いて下さい。
絵になり過ぎて、物凄く部屋に飾りたいです。
「俺を婚約者にしてくれませんか?」
動悸息切れが半端ないんですが。ドキドキして心臓がいくらあっても足りません。
どうして婚約者候補様はそんなに素敵なんですか?私をどうしようとしてるのですか?あぁ、婚約者にしたいんでしたね。
「フレア、返事もらえませんか?」
そんなに熱い視線を送られても、どうしていいのかわかりません。思考が完全に停止しそうです。
上目遣いでこっち見ないで下さい。
「俺の事嫌い?」
「……嫌いじゃないです」
「じゃ、俺の事好き?」
「……す、好きです」
私は何を言ってるんですか。顔から火が出そうです。顔を隠したくても手を握られていて隠せません。恥ずかしくてどうしたらいいかわからないのですが。こういう時経験値がないと本当に何も出来ないんですね。
「だったら俺と婚約して貰えますよね」
キラキラな笑顔で言わないでください。
なんか変な趣味に走りそうになります。
婚約者候補様は俺様ですか?
俺様は好物なのでもっと言って欲しいですが、私に対しては遠慮したいのです。
婚約者候補様に手をギュッと握られてます。これは返事を急かされてますよね。
本当に私でいいんですか?本当に婚約者候補様は物好きですよね。
覚悟を決めなきゃですよね。深呼吸をして、婚約者候補様を見つめます。
「……はい。お願いします」
恥ずかしくて視線を外しながら答えました。
目線を合わせなさいって言ってるのですか?
美形を目の前にしてこんな状況で直視なんて出来るはずありませんよ。
こんな状況で照れずに返事できるなんて小説の中の令嬢だけですよ。
「ありがとうございます。凄く嬉しい」
手の甲にキスをされて、ニッコリ笑顔を向けられたらこう思いますよね。
(もう死んでもいいかも)
いや、死にませんけどね。もう少し婚約者様の事を知りたいと思った私は、勇者だと自分では思ってます。
取り敢えず、婚約者候補様は婚約者様になりました。引きこもりの私はどうなんるですかね。
隣で嬉しそうに笑っている婚約者様を見てると心が温かくなって、今は考えなくていいかなって思うのはダメですか?
で、次の本は庭師と令嬢の小説で大丈夫ですか?
読んで頂きありがとうございました!