五つ目のシュテルン石(4)
「さてと……」
カオルは隣にいる梨太朗をチラリと見上げる。
終わったのはいいが、巨大化桃子のことをどうやってごまかすか。
「あ、あのですね!」
「ん?」
梨太朗がカオルを見る。
「い、今のは、手品なんです!」
手品でごまかす。
強引すぎる気がするが、カオルにはそれしか思い浮かばなかった。
「全部、私が作った手品だったんです」
「あれが手品?」
「そうです。手品です」
何を聞かれても手品押しでいくしかない。
いくしかないのだ。
「桃子さんは店の中にいて全く関係ないですし、私が勝手にやった手品です。手品の練習をしていたんです」
「ふーん。手品ねえ」
梨太朗はあごに手をやり、うっすらと笑いながらカオルをじっと見た。
これは、怪しまれているのだろうか?
いや、怪しまないやつなんていないだろう。
やはり手品では無理だったかと、カオルは眉を寄せて次なる言い訳を考え始めていたら、梨太朗が快活に笑った。
「いやー、今時の手品は凄いんだなぁ」
梨太朗がカオルの頭をガシガシと撫でた。
「また今度、手品を見せてくれな」
梨太朗はウインクをした。
これは騙せたのか?
とりあえず、カオルは貼り付けた笑みを梨太朗に返した。
「そうですね。機会があれば……」
そんな機会など二度と来ないがな!
「じゃあ、俺は家族に挨拶しなきゃいけないから店に入るな」
「あ、はい」
カオルは店に入っていく梨太朗の背中を見送る。
梨太朗が店の中に入ったのを確認してから、カオルは店の窓を覗きこんだ。
店の中では、梨太朗の帰郷にオーナーが驚いていた。
オーナーは慌てて梨太朗に何かを話している。
窓の外からでは声は聞こえなかったが、オーナーが焦っているのは表情から分かった。
たぶん桃子が倒れたことを話しているのだろう。
その桃子が長イスの上で起き上がった。
シュテルン石の影響がなくなって、意識が戻ったのだ。
それに気が付いたオーナーは、桃子の元気そうな様子を見て、ほっとしているようだった。
「これで……。一件落着か?」
「そうですね」
「うおっ」
カオルはいきなりヴィーゼルが隣に現れて驚く。
完全に油断していた。
「うおっとはなんですかうおっとは」
「すまんすまん」
「まったく……。ボクはこうしてシュテルン石をちゃんと回収していたというのに……」
ヴィーゼルの手にはピンク色のシュテルン石があった。
「ついに五つ目のシュテルン石か……」
ヴィーゼルはエーデルキステをリュックから取り出して開け、五つ目の窪みにピンクのシュテルン石をはめた。
これでエーデルキステの窪みは全て埋まった。
魔法少女から解放されるのだと、カオルは感慨にふける。
もう酷い目に遭わなくていいのだ。
あんな欲望に塗れた感情を向けられることもない。
恥ずかしいことをさせられることもなくなる。
そして、ヴィーゼルとも……。
少しだけ心がざわついた気がしたが、カオルはそれにフタをし、気付かなかったフリをした。
シュテルン石は集まった。
これは、喜ばしいことなのだ。
カオルはシュテルン石を見つめながら、そう自分の心に言い聞かせた。
五つのシュテルン石は、これまで以上に輝いているように見えた。
ヴィーゼルがエーデルキステのフタをパタンと閉じた。




