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幼女と幼女と変態と(5)

「まあ、カオルさんがバカだろうがどうでもいいのですが、ついでに言っておくと、このままシュテルン石にエネルギーを吸われ続けたら、それこそあの男の命に関わりますよ」

「どういうことだ?」

「シュテルン石が吸い上げるエネルギーは、生命エネルギーに近いのです。吸われている対象はその影響を受け、吸い尽くされると死にます」

 ヴィーゼルはとんでもないことをさらっと言った。

「じゃあ早く倒さないとまずいじゃないか!」

「そうですね」

 カオルは巨大な変態男を見る。

 変態男は電信柱で引っかかった腹に悪戦苦闘していた。

 どうやらこちらに来たいのに、腹が邪魔で通れないらしい。

「今が攻撃するチャンス、なんだが……。どうしよう、この女の子……」

 女の子はまだカオルにしがみ付いていた。

 これでは動けない。

「そうですね……。魔法道具を使いましょうか」

「うげ……。また魔法道具か……」

 今度はどんなものを使わされるのか……。

 ヴィーゼルはリュックからパソコンを取り出した。

「この女の子には抱き付いてじっとしていてもらった方が安全ですので、身代わりドールを使いましょうか」

 パソコンから金髪碧眼の可愛らしい男の子の人形が出てきた。

 カオルはヴィーゼルからその人形を渡される。

 金髪碧眼。

 カオルは何だか嫌な予感がした。

「まさかこれ……」

「この人形にキスをすると、キスをした人物とそっくりの姿になり、居場所が瞬時に入れ換わります。そして、この人形のモデルは王子です」

 可愛い人形なのに、不気味さがいっきに増した。

「……キスってのは、どこにしても有効なのか?」

 背中だとか腹だとか、百歩譲って頭でも我慢する。

 カオルは微かな光明を求めて、ヴィーゼルに聞いてみた。

「口限定です」

 ヴィーゼルはキッパリと言った。

 あの王子の変態っぷりは神がかり的だった。

「くそおおおおおお」

 カオルは頭を抱えて悶えた。

「さ、お早く」

「ぐぐぐ」

「おおっと。実体化したシュテルン石が来ますよ」

 ヴィーゼルに言われて巨大な変態男を見ると、ようやっと電信柱を抜け、ドシンドシンとゆっくり歩きカオルたちのもとへと向かって来るところだった。

 身体が重いからか、巨大な変態男の動きはだいぶのろい。

 だが、確実にカオルたちへ近寄って来ていた。

 嫌がっている場合ではない。

 カオルは覚悟を決めた。

 王子の人形を自分の顔に近付ける。

 人形の顔を間近に見るのが嫌で、カオルは目を閉じて人形の唇にキスをした。

 いつものごとく鳴り出したシャッター音が、左から右へと聞こえてくる方向が変わる。

 カオルが目を開くと、目の前には可愛いツインテールの女の子がいた。

 腰には女の子がはり付いている。

 魔法少女姿のカオルだ。

 王子人形にキスしたのではなく、この魔法少女にキスしたのだと、カオルは自分に言い聞かせる。

 自分と同じ姿ではあるが、こちらにキスしたと思い込む方が、カオルのダメージは遥かに軽い。

「これで大丈夫ですね。身代わりドールと女の子は、安全な場所に移動させましょう。女の子を連れて戦闘から離れているよう、身代わりドールに命令して下さい」

 カオルはヴィーゼルに言われたように、身代わりドールに命令する。

「えっと……。女の子を守って、戦いから離れていて」

 身代わりドールはコクリと頷くと、貼り付いている女の子をそのままギュッと抱き上げて歩き出し、十字路を曲がって壁の影に隠れた。

 オレンジがかった金髪のツインテールが、隠れた場所から片方だけぴょこんと見えている。

 これなら女の子は安全だ。

 色々と心に傷を負ったが、負っただけのことはあったとカオルは自分を慰める。

「さあ! さっさとあのシュテルン石を倒すぞ!」

 気合を入れるために、カオルは大声を出した。

 ステッキを握り直し、巨大な変態男をキッと睨み付ける。

 巨大な変態男は残り三歩程度まで迫っていた。

 さて、どうやって倒そうか。

 炎で燃やし尽くすか。

 風で切り刻むか。

 どんなことをしても男は死なないのだから、何でも出来る。

「……とりあえず炎かな」

 死なないと分かってはいるが、人間にそっくりなものを切り刻むのは、精神衛生上よろしくなさそうだとカオルは判断した。

 炎もあれだが、風よりかはマシだろう。

 歩いてくる巨大な変態男に向かって、カオルはメモリを最大にしたステッキを振るう。

「レッドリボンシャワー!」

 ステッキから炎が吹き出し、巨大な変態男の顔を炎があぶる。

「あつううううう!」

 巨大な変態男は顔を手で覆って、炎を振り切るかのように大きく身体をくねらせる。

「ようじょが〜。ようじょが〜。俺を火攻めプレイ〜」

「はあ?」

 巨大な変態男が信じ難いことを言い出した。

「どSようじょとか〜。マジ俺得なんですけど〜」

 炎が消え、手をどけた巨大な変態男は、大きく口角を上げて気持ちの悪い笑みを浮かべた。

「も、燃え尽きろ! レッドリボンシャワー! レッドリボンシャワー!」

 巨大な変態男の言動にゾッとしたカオルは、早く消えろとばかりに何度もステッキを振る。

 その度に巨大な変態男を炎が襲うが、喜ぶだけでピンピンしていた。

「く、くそっ。何で攻撃が効かないんだ」

 もう人間の姿だからと気にしている場合ではなかった。

 カオルはこのシュテルン石には炎の耐性があるのだと考え、攻撃の種類を切り替える。

「グリーンハートスプラッシュ!」

 カオルはステッキを真横に振るった。

 風の刃が飛び出し、巨大な変態男を切り裂いた、かに見えた。

「服を脱がそうとするなんて〜、積極的なんだな〜」

 巨大な変態男のシャツの裾が切れて落ち、健康そうなでっぷりとした腹が露出した。

 風の刃は巨大な変態男の服だけを切り裂き、肉体には全くダメージを与えなかった。

「グリーンハートスプラッシュ! グリーンハートスプラッシュ!」

 炎の時と同じようにカオルは何度もステッキを振るい、肉体への攻撃を試みる。

 しかし、結果は変わらず、巨大な変態男のシャツがズタボロになるだけだった。

「だいぶせっかちなようじょだな〜。今、脱ぐからねえ〜」

 巨大な変態男が頭を下げて、ズボンのベルトに手をかけた。

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