君と僕の、肌と汗と。
短いです。
サマーロックストームがついに始まり、一番手のバンドが怒濤の勢いで自分達の音を発信している。
その気迫に僕たち、いや会場の全員は応えるように声をあげる。前々からファンの人、今日初めて存在を知った人、様々な人達の声。僕たちの声もその中にあり、体を弾ませて飛ばす。
一番手のバンド達の出番が終わり、演者は変わるが熱気は高まるばかりだ。サマストは後に出てくるほど演者達の格というか、人気が高いという風潮がある。だからこそファンも多いため、盛り下がらずにどんどん上がっていく。もちろん僕と心優さんも、例外ではない。
「うおらー!」
激しいラウド系のバンドの時は曲に合わせて頭を振る、いわゆるヘッドバンキングも発生する。隣同士の人たちと肩を組むと一体感が出て、僕は結構好きだ。
心優さんが肩を回してくる。それに合わせて僕も心優さんに肩を回す。
心優さんのトップスはノースリーブだったため、肩まで素肌が露になっている。だからちょっと肩に手を回すのはすこし迷ったけど、そこはもう心優さんとの信頼関係を信じるしかなかった。
やはり汗をかいており、肌と肌同士が、汗でぴちりと引っ付きあうみたいだ。最初はそんなことを考える余地があったのだけど、次第に僕も我を忘れて、この熱狂の最中に身を任せた。
そんな時間は、本当にあっという間に過ぎていく。最後の最後まで興奮が冷めず、肩を組むのも自然となっていた。
「はっー! あっちぃ!」
「でもヤバかったですね……来てよかった」
「しかも明日もあるんだろ? やばい」
「まじヤバイですね」
語彙力が消滅したけどやばかった事だけは共有できた。
心も体も満たされた僕たちは、ホテルに戻ることにした。チェックイン前に荷物だけを預けて会場に来たから、どんな部屋なのからこれから知る。
「あんまり広くはないみたいです」
「まぁ寝られさえすえばいいよな」
ホテルの外装はそんなに悪くはないし、部屋もそんなに変ではないだろうと思い、カードキーでロックを解除し、中へはいる。
「ん?」
部屋の中は本当にお世辞にも広いとは言えなかった。だけどそれ以上に、この部屋においての最大の違和感が、そこにあった。
「ベッド一つしかない!?」