サマーロックストーム開幕。
今回も短いです。
「つい、たぁ~!」
「うお……あっつ!」
サマーロックストーム、開幕。
見渡す限り、人、人、人。
一度見た景色ではあるけど、やっぱりこの、ここに来たぞ! っていうわくわく感は他の言葉では言い表せない。そして今回初参加の心優さんは、僕以上に興奮を隠せていなかった。
「どこだっけ、ステージ」
「マリンステージってとこです」
サマストはステージが複数あり、今回僕たちが向かおうとしているのは、幸運なことに僕たちが好きなバンドたちが集中しているステージで、その時点で心優さんも僕もテンションが上がっていた。
のだけど、もう一つ心優さんには知らせることがある。
「そういやブロックとかまだ聞いてなかったな。どこ?」
「ふふ、着いてきてください」
列にならび、それが早ければ早いほどに、前へ前へといける、という仕組みなのだけど。
「……え、一番?」
「ふっふっふ、心優さん。僕たち最前狙えますよ」
最前というのは、言葉の通りアリーナの一番前……演者を遮るものがなく、はっきりいってこの規模のステージでそこにいけるのは、かなりの幸運だった。ほんっとうに、裕一には感謝しないといけないな。
「う、うおおお……近い、近すぎる」
「僕もこの距離は初めてです……」
人でごった返し、ライブが始まれば前へと人が押し寄せるから潰される。けどそうなってでもこの景色は見たいんだ。
まだすこし時間がある、この待ち時間が本当に長く長く感じる。
「ありがとな」
「え?」
「誘ってくれて」
「そんな、全然」
「私はてっきり他の男友達と行くのかなって思ってたからさ」
確かに、チケットが一枚余ったと知って声をかけてきたやつはいた。そいつと一緒に行くのも、有り得たのかもしれないけど……。
「心優さんと、来たかったから」
体が熱い。やっぱり今日は日差しが強いからか、特にそう感じた。
「え、なんて──」
心優さんはよく聞き取れなかったようで、僕に聞き返そうとしたその瞬間、会場に歓声があがる。
「サマーロックストーム! day1! 飛ばしていくぞ!!」
トップバッターを飾るバンドが叫ぶ。
さぁ、始まるぞ、サマーロックストームが。