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ほんのひと匙  作者: 遠津汐|和田貫
悪役ご令嬢 ≪番外≫
3/15

悪役、留学生活を送る

 おまえら、聞いてくれ。


 ご令嬢がすぐ話を盛るんだ。

 どうして女ってあんなに話を盛るんだろうな。



   ◇


 



 そう。こちらではチアリーダーが一番上のポジションなの。あら、クリークと呼ぶのね、失礼いたしました。

 分かりましたわ。

 聞いていたの、ワナビーさん? 私、あなたに理解しましたとこたえましてよ。応援団に連れて行きなさい。


 はじめましてワナビーのみなさま。私をこちらで一月修行させてくださいませ。

 ええ、私、日本舞踊にバレエを習っておりましたの。我が学園は大会にこそ出ませんでしたけれど、私も新体操部におりましたのよ。

 日課でヨガとピラティスも欠かしておりませんわ。トランポリンが好きなのですのよ。身体の柔らかさには定評があってよ。


 あら貴女、そのタイミングでは合わなくってよ。

 私の後方ひねり宙返りがなんだと言うの。いいこと? 落とすのがあなたのお仕事ではないでしょう? タイミングを掴みなさいよ。

 そうね、メトロノームを使いなさい。最善のタイミングってものがあるの。それを掴めば、あとはそのリズムを叩き込むだけ。リズムの変化はそうね、コンピュータギークに知り合いはいないの? あらそう。でしたら、私が用意します。でもあなたも伝手はたくさんお持ちなさいね。食わず嫌いはよろしくなくてよ? 幅広い伝手は必ずあなたを助けるわ。

 細かなリズムを繰り返して身体に覚えさせてしまえば、もっともっと連続技も決まるようになるわね。基礎力は付いていると思うわ。伸び代をまだまだ感じるもの。

 試してみましょうか。一番高さが出るタイミングに合わせるだけのことよ。ほら今のご覧になって?


 そうね、よろしければ、しばらく貴女たちのチアを見ましょうか。貴女たち基礎力がありますもの。完璧なタイミングを掴めば、もっとメリハリもでるわ。

 ええ、もっとパーフェクトに決められるわ。そうよ、全米一を目指しては如何かしら。



 アメリカでの学生生活はどうかですって。ええ、何にも問題ありませんわ。ご心配ありがとうございます。

 あら、心配されるのも心地いいわね。


 でも大丈夫よ。クイーンビーは私の崇拝者なの。積極的に向こうから声をかけてきてくれるわ。だって私がいなければクイーンビーたちはより華やかなプロの世界に上がっていけなかったのですもの。彼女たちは私にとっても感謝しているの。

 クイーンビーから話を聞いたジョックも私に優しいわ。それはそうよね。鼻が高いもの。


 まあ身長も足の長さも足りないし、留学生でもあるから、クイーンビーの座は狙わないわ。それがこちらの郷に入るってことだわ。分を弁えながら領域をじわりじわりと崩すのよ。

 サイドキックスはともかく、ワナビーやプリーザーは、クイーンビーの覚えめでたい私のクリークを自分たちより上と看做してくれているの。ブレインも私に一目を置いているわ。この辺りが落とし所ね。

 本当の私はギークの彼を好いていて、アメリカ式のクリークなんてどうでもよいけれど、まあ彼だって運動のできるサムライギャルソンですもの。うまく誘導して、これからも彼女たちともうまく付き合っていくわ。


 これが私の留学生活よ。





 悪役ご令嬢に欠点があるなら、それは話をマシマシにしてしまうことじゃないかな。


 マジかよ……。

 いや、たしかにやたら華やかなグループにいるなとは思ってたけどさ、いやこれはマジでないでしょ。


 ジョックだのクイーンビーだの、そんなキラキラしいものに出会えるはずがないだろ?

 そんなの夢見てるだけだろ?


 まあ猫目をキラキラさせてマシマシに語ってしまうご令嬢の、そんなところもかわいいんだけどな。


 

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