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メッセージ

黒。


暗闇の中で僕は動けずにいた。


寒い。膝を抱え込むように座り目を開けても意味が無いであろう暗闇を見つめていた。一体この闇の中にどれくらいの広さがあるのだろう。


果てしなく広いのか、それとも数センチあるいは動けば壁なのかそれすらも分からない。


動けば何か分かるのかもしれないけれど不用意に動けば危険な気がする。しかし動かなくてはならない様な気もする。


恐怖はそれほど感じない。

むしろそれとは対極の安心感に似た何かを感じていた。


とくん。


不意に背中が暖かくなる。


とくん。


じんわりと暖かさが背中から広がる。


「ねえ雫、聞こえてる?」


「…ひよりっ!?」


「ふふ、名前で呼んでくれるの久しぶりだね」


「なんで…?なんでひよりがいるんだ!?」


思わず振り返ろうとすると誰かに止められた。

無数の冷たい手だった。


「何だよこれ…」


「もしかして雫は最後の手紙の意味を分からずに来たの?」


最後の手紙…ああ、あれか。

"これでおしまい、おやすみなさい"あれにあの言葉以上の意味なんてあるのかな…?


「えー!ちょっとショックー、ココは雫の夢の中なんだよ。最後の鍵は寝ることだったんだよー」


「ええ…難易度高くない?」


「高くない!」


「そうかなあ…」


「そうだよ」


呟くようにひよりが言った。


しばらく沈黙。折角会えたのに、多分もう最後なのに、言葉が……出てこない。ただこの背中の温もりが、ひよりの生きている何よりの証明だった。


「私はここにちゃんと居る。いつまででも待つから」


ひよりの声が微かに震えた。


「その代わり次に胸張って会えなかったら承知しないからね」


「うん、約束する」


ふふっ、とひよりが嬉しそうに笑った。



とくん、とくん。


生きている音が聞こえる。



「ねえ雫、言葉にしないで」


「うん」


これは君にだけ届けばいい。

言葉にして思い出になる前に、この今を、一瞬を…






「……!」


僕は弾かれたように飛び起きた。


「夢…なんかじゃないよな」


外はまだ薄暗く、シンと静まり返っている。

風が優しくカーテンを揺らし、机の上にあったノートのページを捲った。


何気なくそれを見て僕は目を見開いた。

そこには ひよりの文字で一行、こう書かれていた。


"雫へ、どうか幸せになって下さい"

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