昼寝
「…とは言ったものの、さてどうしたものか」
背中で眠っているとどめちゃん。
想石家にとどめちゃんを届けたら何だかややこしくなりそうな気がするし、かと言って僕の家に寝かしておけばもっとややこしくなりそうな気がする。
しばらく考えながら歩いた結果、小学校の下校時までに起きなければ起こそうというこのになった。
紅と青の入り混じった木々が並ぶ参道をゆっくりと歩く。冬になれば、葉っぱが落ちて代わりにLEDが光を灯し、春になれば上も下もピンク色に染め上げる。
一年中、様々な表情を見せてけれる僕のお気に入りの散歩コース。
そういや、ひよりが入院してからは散歩なんてしてなかったっけ…忙しかったし、何よりそんな気分になれなかった。
参道をしばらく歩くと大きな鳥居が見えてくる。
名前は忘れたけれど、ここら一帯では有名な神社。鳥居をくぐってから本殿まで800メートルくらいある。普段運動しない人にとっては丁度いい距離で健康にも良いとテレビで取り上げられていたのを何度か見た。
別に健康志向でもないし、1キロ近くも歩くのなんて疲れるだけだから滅多に行かなかったのだけれど今日はなんだか歩いてみてもいいような気がする。
鳥居をくぐると石の階段が結構先まで続いていた。
や、やっぱりやめようかな…
でも引き返したところで、どの道歩くのだから大差なんてないか…
凸凹した石の階段を転ばないようにゆっくりと登る。
半分くらいしたところで息が上がってきた。成程これはいい運動になりそうだ。とどめちゃんこの辺りで目が覚めて自分で歩いてくれないかなあ…
まあ僕が勝手に登っているだけなのだけれど。
数分立ち止まり再び登り始める。すれ違う老夫婦にぺこりと頭を下げ元気だなあと感心した。
1番上まで登ると遠くに小さく僕の通っている高校が見える。今は昼休みかな?日吉や徒花さんがあの小さな校舎の中にいるのかと思うと不思議な気持ちになる。
深く息を吸って吐く。
新鮮な空気が肺を満たし、身体が、心が洗われる。
それだけで心まで満たされる。
木の階段を少し登るとお賽銭箱があり、その上に鐘が吊るされている。とどめちゃんが眠っている手前、鐘を鳴らすわけには行かないので手だけ合わせる。(合わせる…といっても片手になってしまうのだけれど)
とどめちゃんを賽銭箱の横に寝かせる。
…お?軽っ!
とどめちゃん降ろしたら軽っ!
何だかとどめちゃんを下ろしたら90キロの体重が60キロに減ったかのような軽さ。おっと…
眠っているのに何故かとどめちゃんに睨まれたような気がした。僕もその隣に腰掛ける。
歩いてきた階段がが木漏れ日に照らされる。何だか光が階段を昇り降りしているような気がした。
木々のざわめき。微かに冬の香りを乗せた風。
手水舎の水の音が合わさって何だかとても心地が良い。
ちょっとだけ昼寝…




