まあいいか
その医者は僕の隣の椅子に腰かけ話し始めた。
「色取くん、君は確か小春日和さんの…彼氏さんだっけ?」
僕は首を振る。
「いえ、幼なじみみたいなものです」
僕とひよりの関係は幼なじみと言うには深すぎる気もしたけれど、そういうことにしておいた。
「ああ、そうか毎日毎日通っていたからてっきり彼氏さんかと…いや、そんな事はどうだっていいか。私はあの子の主治医だ」
「この度はどうも…」
僕は頭を下げる。
「お礼を言う必要はない。最善は尽くした。だが…今だから言うが小春日和さんは助かる見込みはほぼ無かった。彼女自身、それを理解していたように私は思う」
「そうでしょうね」
と言うかそれしか考えられない。
そうじゃなければ誰よりも明日を、未来を望んだひよりが自殺なんてするはずがない。
「じつは小春日和さんからある物を渡すように頼まれていてね」
そう言って、医者は鞄から封筒を取り出した。
「いつになるか分からないけど、いつかきっと、この病院にくるからどうか渡して欲しいと懇願されてね。本来なら断るんだけど…」
そう言って封筒を差し出され僕は受け取る。
「なんだか君達を見ていると昔の自分を見ているようでね」
一体この医者はどんな高校生時代を過ごしたのですかと聞きたくはあったが、それよりも封筒の方が気になったので機会があれば聞こう(機会があればすると言うのはしない常套文句)と言うところで妥協。
「…それじゃ私はこれにて」
医者は立ち上がり部屋を出ていこうとした。
「あの、ありがとうございました」
「全く…若さってのは羨ましい」
そう言い残し医者は部屋から出ていった。
若さ…若さって何なのだろう、何歳までが若さなのだろう。そんなことをぼんやりと考えてみたけれど結局分からなかった。若さゆえなのかも知れない。
封筒に視線を戻す。
流れ的に"4"のお守りかと思っていたけれど、厚さ的にどうやらお守りじゃなさそうだ。となれば中身は一体何なのだろう?
考える。
分からない、開けちゃお。
どうせ今日一日何も出来ないのだし。
ビリビリと勢い任せに開ける。中からは1枚の手紙の手紙が出てきた。




