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ふと気がつくと僕は岩にもたれ掛かる形で眠っていた。一体どれくらい眠っていたのだろう、酷く寒い。

歯がガチガチと音を鳴らす。そんな中ほうっとポケットに熱を感じた。


手をポケットに突っ込み"ソレ"を取り出す。

もはや(あつ)いまでに(ねつ)を持ったお守りだった。今回は金字で"3"と刺繍されている。


僕はお守りをぎゅっと握りしめ家に向かった。


幾分か雨も小降りになった。


考える事が沢山ある、この気持ちが冷めないうちに、記憶が暖かいうちに…

少しだけ足早に、僕は家に向かう。


家に着くと僕はそのままシャワーを浴び、自室に向かった。ノートとボールペンを机の上に広げる。


僕はただ想い出の感傷に浸るだけじゃダメだ。

ひよりのメッセージを僕は受け止めなくてはいけない。思いつくままノートにペンを走らせる。


・一回目


多分小学生の頃の記憶。

公園のジャングルジムでひよりと夕陽を眺める。

触れると消えてしまった。



・二回目


中学生の記憶。

雲祓神社、山に登りひよりとベンチに並び夕陽を眺める。

季節は秋。






30分程考えて出てきたのはこれくらいだった。

我ながら自分の記憶力に失望する。と言っても、このメッセージを伝えたのは他の誰でもなくひよりなのだから、二つの記憶を完璧まとめたところで別に何がどうなる訳では無いのだろうけれど…


・共通点…夕陽?


とだけ書き足す。

十数年、一緒に生きてきて、辛い事も、楽しい事も、嫌な事も、嬉しい事も全部を分け合ったひよりが僕に向けたメッセージなのだから例え数十年掛かろうが解き明かすつもりだけれど、やはり早いに越したことはない。


……ような気がしなくもない。


だってそもそも10年後の僕に向けたメッセージとかなら分かりようが無いじゃん!


「だー!くそっ!1分子もわかんねー!」


ボールペンをダーツのように狙いすまし、ペン立てに投げる。綺麗な放物線を描きペン立ての横を(かす)めていった。


ボールペンを拾い上げ、ペン立てに戻そうとするがまた思い留まる。再び狙いすまし、投げる。

さっきよりも遠くなったので僕は諦めてペン立てにしまった。


全く、何しているんだ僕は…


多分無意識に恐れているんだろうな、お守りを開けることに。想い出の中の僕達は少しずつ大きくなっている。次の想い出では僕達は高校生辺りになるはずだ。


いつまでも想い出に浸っている訳にはいかない。分かっているけれど、かと言って脇目も振らずガンガン進んでいけるほどの勇気は僕に無い。


きっと僕は怖いんだ。

次が無いかもしれない事が、僕達を繋ぎとめている唯一が無くなってしまう事が。


冬場のカイロばりに熱くなったお守りを取り出す。


「大丈夫だよ雫、私はいつでも待ってる」


そんな声が聞こえた気がした。

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