ちょき
「こ、これが徒花の家ってまじ?」
城のような家を前に驚く日吉。
「マジ」
「…」
言葉を失う日吉に何故か勝った気がした。
何の勝負か知らないけれど。
「さて、ジャンケンするか」
言わずもがな"どっちがインターホンを押すのか決めるジャンケン"だ。腕をグルグルと回し日吉が意気込む。
「いいぜ」
「最初はグー!ジャーンケーン、ポン!」
両者チョキ。日吉め…こいつ、分かってる。
最初はグーと言った時点で次に続けてグーを出す奴は基本的にクレイジーかアホだ。従ってパーかチョキに絞られる。勝つ可能性を考えるとチョキを出すしかないと言う訳だ。
ここまでは序の口、肝心なのは次だ。
日吉が敢えて次もチョキをだすのか、グーに逃げるのかパーで攻めるのか。
「あいこでしょ!」
両者チョキ。やはりこいつ…考えてやがる。
パーで攻めてくるかと思いきや、イリュージョンのチョキ。だが次で決める!
僕はこの手で勝利を…"掴み取る!"
「あいこでしょ!!」
僕はパーを出した。日吉は…チョキ。
僕の負けだ。超イリュージョン3連続チョキ。
「なっはっは!俺の勝ちぃ!」
「僕の負けだ、まさか3連続チョキとは…」
「ん、こいつはチョキじゃねーぜ、ビクトリーのVだ。俺はジャンケンでチョキしか出さねー」
そう言って日吉はVサインを僕に向けた。僕はガックリと膝を折る。アホじゃないか…チョキって自分で言ってるじゃないか…こんな奴に僕は負けたのか。
インターホンに手を伸ばす。
「朝っぱらから人の家の前で何してんの?」
まだ押してもいないインターホンから声がした。
「うわぁ!お、おはよう徒花さん」
「この間防犯カメラ付いてるって言ったじゃん、私が居なかったら君達ただの不審者だからね」
返す言葉もございません…
「今行くからちょっと待ってて」
しばらくすると自動シャッターが開き、徒花さんが出てきた。何だか登場シーンまで格好いい。
徒花さんは思い切り息を吸い込み、眩しい顔で言った。
「よし!行こっか!神社探し」




