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言い訳裁判

僕は部屋で横になって滲んだ天井を見上げる。上をむくと涙は(こぼ)れないと思ったけれど、そんな事も無いようだ。


彼女が死んだと聞いた時は生きた心地がせず、彼女が死んだ時点でそれは最早 僕も死んだと同然だった。

半身をもがれたと言うよりは全身を失った気分だった。それ程僕にとって大きな存在だったのだと気付かされたのだ。もう今となっては、何もかもが今更だけれど。


何も考えたくない。

いっそ何も考えられないほどに狂ってしまえたら楽なのだろうけれど、その一線を越えられないのは僕の甘さで、きっとそれが……




気が付くと僕はまた法廷に立たされていた。

裁判長らしき人が僕に問いかける。レースのようなものを被っているので顔はよく見えないが毎回同じ声なので多分同じ人だと思う。


「彼女はシニマシタ」


ああ、またか…


「彼女はどうしてシンダノデスカ?」


やめろ、やめろやめろ。やめてくれ。


「彼女はダレニ、コロサレタノデスカ?」


僕は堪らずに視線を下に向ける、ふと自分の手に視線がいった。血にまみれた自分の手に。


「あああああああ!!うわあああ!」


絶叫と言うより悲鳴に近い声で目が覚めた。

なんだ…夢か。そう思いふと自分の手を見る。血は付いていない。確かに夢だ。

もしかしたら彼女が死んだのも夢なのでは無いかと淡い期待をするのだが期待は儚く消え虚しさだけが残る。


さっきの答えを、僕は知っている。僕だけしか知らない真実。


彼女を殺したのは僕なのだから。


狂いたくても狂えない。逃げ出したくても逃げ出せない。一生抜け出せない袋小路で僕はずっと苦しみ続けるのだろう。


"何もしない"


きっとそれが、僕の罪であり罰なのだ。


その経緯と未来に生きた彼女の昔話。何でもないただの戯言(たわごと)のような僕の言い訳だ。

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