台風の日
台風の中僕の家にやってきた2人目の不審者、徒花さんにタオルを渡す。
「あっはっは!色取ー、徒花に本気でビビってたのかよー!」
僕の背中をバンバンと叩きながら日吉が大笑いする。
なんかもう、死にたい。
「開いたと思ったらすぐ閉まっちゃうし、返事も無いし泣いちゃうかと思ったよ」
涙を拭いながら徒花さんが言った。
「ごめん、徒花さん。何か台風というシチュエーションも相まってホラー映画のオバケみたいに見えちゃったんだ」
「全くもう…」
徒花さんはぐすんと鼻を鳴らした。
「そ、そもそもどうして僕の家に?」
「だって、昨日"明日学校来るよね"なんて聞いておきながら行けなくなったから、色取ハウスに行くしかない!って思ってね」
ついさっき聞いたようなセリフだった。
「まあ、学校でするような話でも無いだろうから休校になったのは結果オーライなのかも知れない」
「玄関でするような話なのか…?」
雨に濡れた徒花さんがホラー過ぎて忘れていたけれど、そういや玄関だった。
とりあえず2人を僕の部屋に案内する。
「それで、話って?」
徒花さんがさっきとは打って変わって、真面目な顔つきで聞いてきた。
そして僕は、覚束無いながらも全てを説明した。体育祭の前日彼女に1のお守りを貰った事、そのお守りの中に書いてあった公園の事、昨日見た僕達の想い出の事…
そして、2のお守りに示されていた場所が今はもう無い事。
僕は2人に2番目のお守りの中身を見せる。
"中学の頃待ち合わせした神社"
「読み方は分からないけれど、空に浮かぶ雲に悪魔祓いの祓で雲祓神社だったと思う」
「神社が無くなるなんて珍しい話だよね」
徒花さんが腕を組みながら言った。
「確か僕が高校に入ると同時に無くなった気がする。移動なのか取り壊しなのかは分からないけれど…」
「俺は昔からこの町に住んでるけど雲祓神社なんて聞いた事ねーな」
「元々人目に付きにくい所にあったし、知ってる人もかなり少ないと思う」
「何はともあれ行ってみた方がいいんじゃない?もしかしたら神社はあんまり関係ないのかもしれないし」
「一応行ったには行ったんだ。でも神社ごと無くなっていた。鳥居の横にあった大きな岩だけは残されていたけれど…」
まあ、さすがにあのサイズの岩を運ぶのは骨が折れそうだしな。そもそも神社のものかどうかも分からないし。
「そこで何も見なかったってことは別の場所に移動したんじゃないかな?」
スマホを見ながら徒花さんは呟いた。
「神社が移動なんてあるの?」
「ほとんどないみたいだけど、ごく稀にあるらしいよ」
数年間僕があの神社に通い続けて、彼女以外の人と出会ったのはほんの2、3回程度だ。かなり廃れていたし潰されてしまったと考えるのが妥当な気もする。
「でもさ、ひよりちゃんがメッセージを残したってことは何か関係あるだろ」
そう、そこだ。
高校に入る前からお守りを作っていたならまだしも、神社が無くなったのは高校に入ってからだし、彼女が病気になったはその後くらいだ。だから神社が無くなってからお守りを作ったと考えるのが妥当だろう。
「うーん、それに雲祓神社ってネットじゃほとんど情報がないね」
そう言って考え込んでいた徒花さんがしばらくして手を打つ。
「取り敢えず私は家に帰って洗いざらい情報を探してみるよ」
「俺も色んな人に聞いてみる」
「ありがとう、徒花さん、日吉」
「まだ雲祓神社は見つかってないぜ」
日吉が手を出す。
「そして想い出も」
そこに徒花さんが手を重ねる。その上に僕は手を重ねた。
「絶対に全部見つけよう!」
「「「おー!」」」
彼女のいない秋が来る。




