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インターホンが

今になって知ったことだけれど、昨晩の大雨は台風の余波的なやつだったらしい。だから今日は台風直撃という訳で学校は休みになった。


テレビをつけると「記録的な豪雨に〜」なんて言っていた。電車も止まっているみたいだし店も閉まっているみたいだし出掛ける用事も特にない。

ただ両親は仕事に出掛けた。もしかしたら僕の両親は世界が滅亡する日でも出勤するのかもしれない…


なんて事を考えながらぼんやりとテレビを見ていると不意にインターホンが鳴った。


―ピンポン。


出ようと立ち上がり僕はふと足を止める。

台風の来ている時に来る客なんて怪しすぎるじゃないか。多分まともなやつじゃないな、そう思い無視する事にした。


―ピンポン。


再びインターホンが鳴った。

無視すると決めておきながら、無視しようとすると何だか心がムズムズするので、おろした腰を再び浮かせる。


「はーい」


ドアを開けるとそこに立っていたのはベチャベチャに濡れた不審者…ではなく日吉だった。


「よう!台風だぜ!休校だぜ!」


「……」


こいつはアホなのだろうか、こんな大雨の中傘もささずに…って人の事言える立場じゃないか。


「ステイ!ちょっとココでステイだ。昨日僕を家に入れてくれなかった理由がようやく分かった」


僕は日吉を玄関に入れてから待機させタオルを取りに戻った。


再び玄関に向かい、タオルを投げる。


「さんきゅ!全く、明日学校で!何て言っておきながら学校が休校になっちゃ世話ねえよな」


「それはそうだけど、何も台風の中こなくても…」


「ははは!よく言うぜ!大雨の中走ってきて、"今じゃなきゃ駄目なんだ"なんて熱い事言っておきながらー」


しまった、墓穴を掘った。

なんかもう穴があったら入りたい。あ、自分で掘った墓穴に入れば丁度いいや。ってなんでやねん。


ちょうど僕が脳内で一人コントをしている時にまたインターホンが鳴った。


―ピンポン。


静寂。こんな台風の中わざわざ僕の家にやってくる不審者が2人?


恐る恐るドアを開けるとそこに居たのは…


―バタン。


僕は慌てて扉を閉めた。


「え、どったの?」


と日吉。僕は早鐘のように鳴る鼓動を抑えるのに必死で答えられない。暑い訳でも無いのに汗が吹きでる。


「日吉、裏口から逃げよう」


僕が出来るだけ小声でそう言うと、日吉もそれに合わせて小声で聞いてきた。


「一体何なんだよ、逃げるったって外は台風だぞ?」


「台風だろうがココより安全なのは間違いない」


―ピンポン。


再び鳴るインターホン。続いてコンコンとノックの音。たぶんこのドアが破られるのも時間の問題だ。


歯がガチガチと音を立てる。それを見て日吉は


「一体誰なんだ?教えてくれよ」


と、少々語気を強めて聞いてきた。


「分からない…でも、この世の者じゃないのは分かる」


「はあ?このご時世に幽霊か?エイリアンか?」


そう言って日吉はドアを開けようとするので僕はそれを制す。いや、食い止めると言った方が正しいかもしれない。


「日吉、勇気と無謀は違うんだ。僕達がどうにか出来る相手じゃない」


"まあ色取がそう言うなら…"

と日吉が伸ばした手を引っ込める。


―コンコン。


再びノックの音。よく耳を澄ますと雨風の音に混じって微かな声が聞こえる。


「色取くーん、開けてよー」


聞き覚えのあるその声に、嫌な予感がした。

また少しだけドアを開き外の様子を見てみると、全身びしょ濡れで半べそをかいている徒花さんの姿があった

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