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言い訳裁判 第2審

体が重い、頭も痛い、瞼も重い。

何よりも心が痛い。


それでも何とか瞼を開け周りを見ると僕の部屋であることに気付いた。


あれ…どうやって帰ってきたんだっけ?


思い出せ無い。

指一本動かす気力すら無い。


涙で天井が滲んで見えた。僕は再び逃げるように目を瞑る。


さっき見たあの裁判の続きだった。


「【彼女】は死にました」


ああ、またか…


「彼女はどうして死んだのですか?」


やめろ、やめろやめろ。やめてくれ。


「彼女は誰に殺されたのですか?」


僕は堪らずに視線を下に向ける、ふと自分の手に視線がいった。血にまみれた自分の手に。


「あああああああ!!うわあああ!」


自分の悲鳴で再び目が覚める。


「色取くん!大丈夫!?」


「色取どうした!!」


日吉と徒花さんがほぼ同時に部屋に入ってきて同時に叫んだ。


僕はと言えば汗だくで泣いていたけれど、ひとまず"大丈夫"とだけ答えて頭を整理する事にした。


「えーと…なんで2人が僕の家にいるの?」


「何でって色取くんを置いて帰れる訳ないじゃん、それに残ってって頼んだのは色取くんだよ?」


と徒花さん。


おかしいな…全く記憶にない。


「因みに僕が今家にいるのは?」


「色取がフラフラになりながら帰るって言い出したから俺達が送ってきたんだ。もしかして覚えてねーのか?」


と日吉。


先生の話を聞いてから今までの記憶が全くない。

断片的に覚えているとかではなく、そこだけ抜け落ちたかのように記憶が無い。


そもそも僕が、たとえしんどくて意識が朦朧としたところで残ってくれなんて頼むだろうか?


いや、無いだろう。


心配そうな顔を向ける2人に僕は言った。


「ともあれ、ありがとう。僕はもう…」


"大丈夫だから"と言おうとした。

パシン!という音と共に鋭い痛みが頬に走る。


「大丈夫な訳ねぇだろうが!ずっと泣いてる事に自分で気付いてねぇのか?」


日吉が怒鳴った。

僕が…泣いている?ふと頬に手をやり、ようやくまだ涙が止まっていないのだと気が付いた。


「俺は帰れと言われてもここに居るぞ」


日吉がいつになく、鋭い視線でそう言ってどっかりと座り込んだ。


「え、えっと…」


突然の出来事に徒花さんが慌てる。


「徒花、ここには俺が残っとく。」


徒花さんは、それを聞くと目に涙を貯めて深く頷き"じゃまた学校でね二人とも!"と言って部屋から出ていった。


「……」


徒花さんが出て行ったあと何とも気まずい空気が流れる。


「なんつーか、さっきはごめん」


「僕も冷静じゃなかった…本当はすごく助かった」


「冷静でなんて居られる訳ないよな、俺だって何が何だか分かんねえよ。色取の気持ちだって全部は分からねえ、けど色取が誰より(つら)いのは分かってるつもりだ。だから、そんな時くらい俺たちを頼ってくれよ」


微かに震える声で日吉は言った。


思えば、僕は今まで彼女以外の人に頼った事がなかった。いつも僕を助けてくれたのは彼女だったから。


「ありがとう日吉、それじゃ今夜は泊まっていってくれる?」


僕がそう言うと、日吉は嬉しそうに"ったりめーだ!"と笑った。



その日の番は少し安心して眠れたせいか、こんな夢を見た。

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