止まない雨も無いけれど、降らない雨も無いんだよ
後悔ばかりの人生だった。
何かを決断しなければならない時、僕はいつも逃げた。そもそも向かい合ってすら居ない僕に逃げるも何もあったものじゃないだろうけれど、いつも消極的な選択をする。残る後悔を味わって、時には死のうと思ったこともある。
もし自分で考えて、悩んで悩んで行動したならば、もっと違う未来があったのだろうと今になって思う。
たとえそれが結果的に同じ道だったとしても、だ。
人生最後の、彼女のワガママを僕は聞いてやれなかった。断る事が何を意味するのか、僕には分かったはずなのに、僕は…
僕は目を逸らした。
翌朝、ホームルームの時間に先生は遅刻して入ってきた。それも黒いスーツ姿で。
「皆、非常に悲しいお知らせがあるが落ち着いて聞いて欲しい。小春日和さんが先日、亡くなった」
ハンカチで涙を拭きながら先生は言った。
ザワつく教室。
その言葉を聞いた瞬間、プツンと僕の心をつなぎ止めていた何かが切れる音がした。心から色々なものが零れていく。僕を僕たらしめていた核心的な部分が根こそぎ無くなった気がした。
残ったものは何も無い。
何も聞こえ無いし、涙も溢れ無い。
人形のように、ただそこに僕と言う人間の抜け殻がいるだけだった。
世界から色が零れ落ちて、灰色になってしまった。
灰色になった世界に、彩を与える人なんて今となってはもう居ない。
視界が徐々に暗くなる、息が苦しい…
「色取くん!?」
数人の叫び声を最後に意識が途絶えた。
知らない誰かから、裁判にかけられる夢を見た。




