オオカミと防御壁
腹を満たしたフェンリルは配下を引き連れて島を登って来た。
防御策を前に考え込む。
「ガルウ!(なかなか攻略しがいのある防御壁だな)」
「ガウ!(こんな壁、飛び越えてしまいましょう!)」
「ガルウ!(まあ、待て。これだけの防御壁だ。飛び越えるのは無理だ。柵の前には堀が掘ってあるので、俺はともかくお前たちには飛び越えられないだろう)」
「ガウ!(面目ねーっす! 死ぬ気でよじ登るっす!)」
「ガルウ!(よじ登るのも無理だな。よく見るとあの壁は棘の様に尖った柱の集まりだ。先端には毒が塗ってあるかもしれない。無理に登れば大ケガは間違いない)」
「ガウ!(さすが兄貴、状況の分析力が半端ないっす!)」
「ガウウ!(すばらしい!)」
「ガウ!(じゃあ、どうすれば?)」
「ガルウ!(まあ、慌てるな)」
フェルは喉を鳴らし堀の水を飲む。
どうやら毒は入ってなかったようだ。
「ガルウ!(真水だな。毒は入ってない。戦いのケリがつくまでしばらく水が飲めなくなるのでお前たちもしっかり水分を取っておけ)」
「ガウ!(へい! 兄貴)」
ガブガブ。
ゴクゴク。
*
物見やぐらからオオカミたちの様子を見ていた俺たちは愕然とする。
壁の防御力強化に設置した堀の水をオオカミたちが飲んでいた。
またしても失態を犯したことを痛いほど思い知らされる。
まさか、堀が敵を助けることになるとは……。
城に篭もり、餓死させる作戦が更に遠のく。
ミーニャもユグも驚いていた。
「堀の水を飲んじゃいましたね」
「これじゃ籠城作戦は失敗だな」
「堀の水に毒を混ぜておけばよかったのです」
「毒か……。今からでも間に合うからやっておくか。幸いシナトベさまに渡したケインの売り上げのお礼でポイントは沢山残ってるしな」
「ミーニャ、ユグ、シナトベさまに毒薬の原料を注文するから、お詫びの祭壇に備えるロランジュを採ってきてくれ」
「はい!」
シナトベさまにはいつも頼りきって申し訳ない。
お供え物のロランジュはせめてもの誠意だ。
祭壇からロランジュの実を送り、毒掃丸の材料を頼む。
「シナトベさま、お願いします。堀に毒を流し込むので、材料をお願いします。あと、いつもお世話になっている感謝を込めてお供え物のロランジュをお受け取り下さい」
今回の戦いを見守ってくれていたのか、シナトベさまからすぐに返事が返ってきた。
『わかったのだ!』
この時、僕はまたしてもとんでもない失態を犯したことに気が付かなかった。
オオカミは耳がいい。
フェンリルともなるとなおさらだ。
しかもオオカミは人間の会話なぞ理解できないが、フェンリルは違う。
僕たちの会話から、
・祭壇のこと
・ポイントシステムのこと
・背後に神様がついていること
を一瞬で理解した。
「ガルウ!(背後に神がついているのか。しかも資材は入手し放題。この勝負、早く決着をつけないと厳しいことになるかもしれない)」
この島のシステムを知ったフェルは一気に勝負をかけることを決意した。
新作の連載を始めました。
幸運の錬金術師 - 最強錬金術師は雑草からポーションを作る! ※ただしポーション偽造の罪で牢屋にぶち込まれました。
錬金術士を始めたばかりの少年が幸運の実を食べたことで幸運のステータスが爆上がり、ハイクオリティー―品を作り錬金道を極める話です。
https://ncode.syosetu.com/n7568gk/




