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オオカミたち

 物見やぐらから海を監視していると夜明けとともに一隻の船がやって来た。

 間違いない、ナビスの船だ。

 前にオオカミに襲われたことを思い出しているんだろうか? 

 ミーニャの身体が震えていた。


「ついに来ましたね」

「ああ、奴はとんでもない物を持って来たな」


 船からクレーンで巨大な木箱を降ろす。

 浜辺に並べられた木箱の紐を引くと箱が崩れ中からオオカミが現れた。

 ナビスが言っていた通りの大きなオオカミだ。

 その中でも一匹、飛び抜けた大きさのオオカミがいる。

 それは魔獣と言っても差し支えのないサイズ。

 体長10メトル体高3メトルもあった。


「思ってたよりも大きいな。前に見た大オオカミの倍ぐらいのサイズだ」

「この柵を越えることは無いと思いますが、大きいですね」


 言葉とは裏腹にミーニャが心配そうに表情を曇らせる。

 あれがフェンリルなのは間違いない。

 オオカミたちはすぐには僕らの所にはやってこずに仲間割れを始めた。


 僕たちの予想だと、エサがないことに気が付いたオオカミたちがエサの取り合いを始めるシナリオだったんだけど、少し違うようだ。


 同じオオカミでも種類が違うので敵対種族と認識したんだろうか?

 巨大なオオカミのフェンリルをオオカミたちが取り囲む。

 取り囲んでいるオオカミのうち、背後を取っていたオオカミがフェンリルの隙を突いて奇襲を掛ける!

 オオカミがフェンリルの首根っこに食らいついたと思った瞬間、フェンリルは身体をひねり逆にオオカミの首根っこに食らいつく。

 一瞬で勝負が決まった。

 首根っこに噛み付かれたオオカミは叫び声も上げることも出来ずにぐったりとした。

 フェンリルは勝者の貫録を持って、敗者である背後から奇襲を掛けてきた卑怯なオオカミを海の中に放り捨てる。

 フェンリルはひと吠えする。

 

「ガルウ!(他に俺に歯向かう者はいるか?)」

「ガウ(とんでもない)」

「ガウ(群れのリーダーはあなた様です)」

「ガル!(うむ、よかろう!)」


 フェンリルは残りのオオカミたちを配下として従えた。

 気絶から回復し、海から上がって来たオオカミも服従の姿勢を取りフェンリルに従う。

 フェンリルがオオカミを配下としてまとめたのを見たユグは驚いていた。


「おとうさん、オオカミたちは殺し合いをしなかったみたいですね」

「ああ、フェンリルとオオカミの実力差があり過ぎて争いにならなかったのか、それともフェンリルに予想以上の知能があってあえて戦いに持ち込まなかったかだな」

「話し合えば仲良くなれるんでしょうか?」


 いや、話し合いで済む相手じゃない。

 フェンリルは予想以上に知性があり厄介な敵だ。

 そんなフェンリルが自らの命を脅かす可能性のある人間を見逃すはずがない。

 間違いなく襲ってきて僕たち人間を根絶やしにすることだろう。


 僕らの生活、いや未来を守る為には必ず倒さないとならない敵である。

 僕はあのフェンリルを倒さねばならない。


 フェンリルは物見やぐらから様子を窺っていた僕たちに気が付く。


「グォオオン!(次はお前の番だ!)」


 フェンリルは島の頂上にいる僕を睨みつけた。

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