ポーション
今年も今日で最後ですね。
何が起こっているのかはわからない。
でも、まずいことが起きているのは確かだった。
突発的な伝染病?
おっさんがやってきたせいか?
持ってきたケインに病原菌が紛れ込んでいて、それを口にしたミーニャたちが倒れた。
そう考えるのが一番無理のない考え方だが……。
今は緊急時。
そんな細かいことを考えている暇はない。
僕は大急ぎで毒消しを作る。
必要なのは薬草と灰。
灰に毒や病原菌を吸着させ原因となるものを減らし、薬草で回復をする。
もっとも単純だが、発症直後なら効果も大きい毒消しだ。
今すぐに作れる薬はこれしかない。
僕は毒消しを作り、ミーニャとユグに飲ませた。
効いてくれ!
頼む!
僕は祈る様に毒消しを飲ませた。
「けほっ! けほっ!」
「に、苦いのです」
効いた!
ミーニャとユグの意識が戻った!
どうやら、毒消しが効いて無事なようだ。
やはり、予想どうりマナケインに病原菌が付いていたんだろうか?
これは処分した方がいい。
マナケインを処分しようと集め始めると、ミーニャが名残惜しそうに僕を見つめる。
「捨てちゃうんですか?」
「二人の病気の原因だからな。焼却処分する」
「おいしいのに……」
おいおい。
おいしいって、まさか飲んだのか?
みると、搾ったかすのケインは有るけど、しぼり汁はどこにもなかった。
「しぼり汁を飲んだのか?」
「はい。飲み始めたらおいしくて止まらなくて……」
「全部のんだのか?」
「はい、全部飲んでしまいました」
「あまくてほわほわしておいしかったのです」
このマナケインが原因なのか?
僕はしぼり器の底に残っていたしぼり汁を指で拭ってなめてみた。
むっ!
むせ返るような刺激が喉をおそう。
「これは?」
酒だ。
かなりアルコール度数の高い酒だった。
しかも甘い。
最初の一口の刺激を過ぎれば、飲みやすい。
醗酵だ。
ケインの茎を満たしている甘い液。
それに発酵菌が入り込み、甘い汁を原料に醗酵。
その結果、甘い汁はアルコールへと変わった。
つまり、酒だ!
この前のマナケインの絞り汁とは明らかに違った。
なんで違うんだ?
僕は畑に植わっているケインを引き抜き、搾り器にかける。
こっちは甘いだけの汁だ。
同じケインのはずなのに違う。
一体どうなってるんだ?
「こっちのおっさんから返品されたケインは酒になっているな」
「お酒なのですか。はじめてお酒を飲んだので気が付きませんでした」
「どうりで、おいしかったのです。お酒もっとのみたいです」
「成人してるミーニャはともかく、ユグは子供なんだからお酒を飲んじゃダメだろ」
「ユグも成人してますよ」
「えっ?」
胸を張るユグ。
この幼女が成人?
お酒を飲んで、酔っ払ってる?
「いやいや、お前は生まれて間もない子供だぞ」
ユグが「ちっちっち!」と言いながら、人差し指を立てて振る。
「お父さんに召喚されるまで、苗としてずっと待っていたの生まれてからずいぶん経つのです」
「そうなのか?」
「そうなのです」
「苗として、どれぐらい待ってたんだ?」
「300年待ったので、今は301歳なのです」
「301歳??」
今更知らされる衝撃的事実。
ユグは僕よりずっと年上だった。
どうりで物知りなはずだ。
びっくりだよ。
今年はいい一年でしたか?




