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御前審判

 あの騎士は王子だった。

 僕はそのミカエル王子のペットの狼を殺した罪で、この国の王ブリニアの前に連行された。


 罪状は王族殺害。

 オオカミが王族だったって初めて知ったよ。

 そんなわけあるかい!

 オオカミは獣。

 王族どころか、ペットでもない。

 王様は王子をなだめるように、静かに話す。

 

「で、この者は何をしたんだ?」

「僕のペット、いや、大切な家族のジェイムスと、ギリアムと、ジャッカを殺しました」

「それで王族殺害の罪なのか」

「はい、お父上」

 

 王様は少し考えた後、話し始める。

 

「さすがに、オオカミを殺した罪で王族殺害の罪に問うのは難しいと思うぞ」

 

 王様は結構まともなこと言っている。

 良識派だな。

 バカな事を平然と言う、バカ息子の王子の扱いに慣れている感じだ。

 

「でも、父上! 僕の大切な家族が賊に殺されたんですよ!」

「同行した騎士から話を聞いてみたが、お前はオオカミを放し飼いにしていたそうじゃないか?」


 そう指摘されると、狼狽える王子。

 明らかに自分が不利な状況でも、反論を続けるのは弁論慣れしてるからなんだろうな。


「狩りの間だけですよ。狩りでリードを着ける訳にもいかないでしょ?」

「その放し飼いで、ここにいる娘が乗っていた馬車の乗員を食い殺しているそうじゃないか?」

「乗っていたのは奴隷と、奴隷商だけです。奴隷商は逃げて無事でした」

「だが、七人も殺したんだろ?」

「奴隷は国民ではありません!」

「いや、奴隷と言えども人間だ。オオカミに襲われたら、反撃するぐらいの権利ぐらいあるだろう」


 それを聞いた王子は、こめかみに血管を浮かび上がらせ怒鳴り散らす!

 唾もまき散らして、完全にキレちゃってる感じ。

 この人、頭おかしいよ。


「でも、あの男は襲われていません! 無関係なのに手を出したのです! 王族を殺した罪で処刑するべきです!」

「ならぬ! オオカミを殺したぐらいで処刑にしていたら、隣国の笑いものになってしまう」


 王様はアホ王子と違って、まともで良かったわ。

 ふー、たすかった。

 僕はホッと息をつく。

 ミーニャも、僕を見てホッとしていた。

 

「でも父上!」

「ならぬ! ならぬと言ったら、ならぬ!」

「ぐぬぬぬ」


 歯ぎしりをして、僕をにらみつける王子。

 今にも襲ってきそうな目付き。

 でも、こっちには王様がついていますもんね。

 はははは。

 そんな顔をしても無駄ですよ。

 王様は僕に向かって笑顔を向けた。


「という事で、王族殺害の容疑が掛けられたが、お前もその女の奴隷も無罪じゃ」

「ありがとうございます」

「父上! なんでそんな審判を下すのです! 相手は賊ですよ!」


 王子は怒りまくっている。

 キレた王子に剣を抜かれて刺されたらシャレにならない。

 ポーションの納品もまだ済んでいないし、こんな危ないとこからは、とっとと帰ろう。

 僕は王様に礼をいい、女の子と一緒に立ち去ろうとした。


「待たれい!」


 爺さんから声を掛けられた。

 現場で助け舟を出してくれた、あの爺さんだ。


「これも何かの縁。王子様と御前試合をしていただけませんか?」

「御前試合ってなんですか?」

「剣での一対一の模擬戦です」

 

 なんか、雲行きが怪しくなってきた。

 ものすごく嫌な予感がする。

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