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かみさまスコップ ~神器で始める開拓農業ライフ~  作者: かわち乃梵天丸
第一章 とある少年に降りかかった災難
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野盗

 僕は馬車を走らせる。


 村からの旅路は順調だったけど、王都に近づくと雰囲気が変わり始めた。

 燃やされた馬車の残骸(ざんがい)が街道沿いにいくつも転がっているのが見える。


 多分、野盗に襲われたんだな。

 馬車に乗っていた人は無事だったんだろうか?

 野盗から逃げられてもこの辺りには獣がでるので襲われたりしてないかな?

 それに、モンスターのゴブリンの巣が近くにあるという話も聞いたことが有る。

 徒歩でこの道を歩くなんて自殺行為だ。


 行商人のおっちゃんの話だと、この辺りにはゴブリンだけでなく、ごく稀にメスオークも出るそうだ。

 巣にお持ち帰りされて、とんでもない目に遭ったという話も聞く。

 夜盗に襲われて馬車を壊され徒歩で街道を歩いて王都に向かう途中、メスオークとバッタリ出会い巣にお持ち帰りされて、僕の女性との初経験がオークになるのだけは勘弁だ。

 まあ、顔を見られた野盗が見逃してくれるとも思えないけどね。

 野盗が出てきたら、全力で逃げた方がいい。

 

 *

 

 途中、野盗に襲われた。

 マジかよ?

 急ぎだっていうのに最悪だ。


 馬車が(わだち)に車輪を取られて、荷台を押しているところを襲われた。

 轍は野盗の作った(わな)だったんだな、と後から気が付いたけど後の祭りだ。


 野盗は三人組。

 平民服を着ているのを見るからに、王都を追い出されてきたチンピラだろう。

 装備は全員とも短剣一本だけ。

 ろくに装備が(そろ)って無い。

 この姿から察するに最近野盗を始めたんじゃないだろうか?

 たぶんギャンブルにでも負けて借金を作って、アルバイト感覚で野盗を始めたんだろうな。

 捕まったら、ただじゃ済まないのによくやるもんだ。

 

「坊主! 有り金と荷物を置いていけや!」

 

 荷物はギルドへ納品する大切なポーションなので、渡すわけにはいかない。

 僕の胸に付けてあるかんざしをみて、野盗が舌なめずりをした。


「いい値段になりそうなアクセサリを付けてるじゃないか?」

「それを寄こしやがれ!」


 まともに取り合うのも面倒なので、かんざしを取り外すふりをして忌避剤を投げつける。

 運よく真ん中にいた奴の顔面に命中だ。

 三人とも忌避剤の煙を吸うと、(しび)れてひっくり返った。

 プルプルと手足を震わせて立つに立てなくてまるで生まれたての小鹿のよう。

 小鹿みたいに可愛くもないけどな。


 野盗を捕まえて王都の衛兵に引き渡せば、お小遣い程度のお金になる。

 でも、報告手続きが面倒なので、ロープで縛って道の脇に捨てておく。

 今日はギルドへの納品期限が迫っていて、報告する暇がないんだ。

 ここに捨てておけば、モンスターさんがお仕置きしてくれるはず。

 メスオークにでも捕まって(もてあそ)ばれ、野盗をしたことを悔いるがいい。

 

 *

 

 昼前になった。


 あと一時間ぐらいで王都に着くぐらいの距離。

 どうにか、納品の時間に間に合いそうだ。


 そう思ってホッとしてた僕の目の前に獣に襲われている馬車が現れた!

 今度は野盗じゃない。

 馬のような大きさの三匹のオオカミだ!


 その馬車は荷台に(おり)を積んでいるので、奴隷運搬の馬車という事はすぐにわかった。

 馬車は横転し、荷台の檻の中の生存者を追い出そうと、オオカミがゆさゆさと揺すっている。


 生存者は……一名。

 

 檻の周りには被害者が身に着けていた、ボロ布がいくつも転がっていた。

 きっと、そのぼろ布の持ち主は今はオオカミのおなかの中だ。

 檻の隅に残っているケモミミの女の子が木枠にしがみつき、襲って来るオオカミから必死に耐えている。

 僕を見つけた女の子が必死に訴えてきた。


「お願い! 助けて!」


 言われなくても助けるさ。

 僕は忌避剤をオオカミに投げつける。

 すると、オオカミは三匹とも泡を吹いてひっくり返った。

 さすが僕の忌避剤。

 こんな大きなオオカミにも効果抜群!


 念の為、毒草丸も口の中に突っ込んでトドメだ。

 三匹とも、ビクビクッ!っと震えるとコロッとお亡くなりになった。


 ふー。

 これで一安心。

 女の子を見るとケモミミをぴくぴくさせて……泡を吹いている!

 やば!

 女の子まで巻き込んでしまった!

 ケモミミの女の子にも効くって、僕の忌避剤優秀過ぎだろ!

 僕は慌てて、気付け薬を使って女の子を起こす。

 

「だ、大丈夫か?」

「え、ええ。なんだか、いきなり気を失ってしまいました」

「そ、そうか」


 どう見ても、僕の忌避剤のせいです。

 犯人は僕です。

 ごめんなさい。

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