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かみさまスコップ ~神器で始める開拓農業ライフ~  作者: かわち乃梵天丸
第一章 とある少年に降りかかった災難
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ポーションの納品

 女の子の迷子の対応で薬草取りが手間取ってしまい、薬草は翌日昼まで集めるのに時間が掛かってしまった。


 本当のことを言うとお弁当を女の子にあげてしまったのでお腹が空いて目が回ってしまい、そのせいで思うように動けなかったのが遅れの原因だ。

 一旦村へ戻ればよかったと後悔。


 遅れを取り戻すべく父さんにポーションづくりを頑張ってもらったんだけど、結局ポーション作成は予定から一日遅れの納品日の前日夜まで掛かってしまった。

 村から王都への定期便に載せられなかったので、僕が馬車で送り届けることになった。

 僕の父さんが頭を下げる。

 

「本当は俺が届けないとならないのに、仕事がたまっていてお前に配達を任せてすまないな」

「僕も馬車の運転にだいぶ慣れたし、王都に行くぐらい大丈夫だよ」

「運転はともかく、護衛は要らないのか?」

「僕の作った魔物の忌避(きひ)剤が有るし大丈夫さ」


 忌避剤とはしびれ薬と言われるものだ。

 馬車の屋根の上で燃やしていれば、獣や弱いモンスターは近づいて来ない。

 野盗には効かないけど、やつらの顔に直接当ててやれば三日は吐き続ける。

 しびれ続けて、ご飯も喉に通らなくなるだろう。


「ガハハハ! それなら大丈夫か。さすが俺の子だ」


 父さんは僕の頭をワシワシと揉みくちゃにする。

 村の人に見られると恥ずかしいから止めて欲しいな。

 って、女の子に見られているし!

 おまけに、笑われているし!

 

「その歳で忌避剤を作れるようになるとはな」

 

 まあ、薬作りは父さんの方が凄かったらしい。

 なんでも、僕の歳には()れ薬を作っていたらしい。

 父さんの薬を仕入れに来た、行商人のおっちゃんが言っていたのを聞いたことがある。

 

「父さんも僕の歳には惚れ薬を作って、村一番の美人の母さんを惚れさせたんでしょ?」

「そうなんだが……、そ、それは、父さんとお前だけの秘密だぞ。母さんには内緒だからなっ!」

 

 舌をペロリとだして、ウィンクする。

 おっさんが女の子みたいな仕草しても全然可愛くないから!

 女の子がやって初めて許される仕草だから!


 犯罪ギリギリというか、間違いなくアウトな事をしていた父の過去。

 新型のゴブリン去勢剤の実験中、風向きが悪くなって近くで演習中の王都の騎士団が巻き添えを食らった事がある。

 部隊全員が煙を吸ってしまって吐きまくり。

 慌てて逃げて帰ってきたという逸話も有るそうだ。

 ゴブリン用の去勢剤が人間に効かない事を祈るのみ。


 そんな父さんだけど、薬学の知識は王都の学者よりも凄かったりする。

 薬師ギルドにも頼りにされていて、今回のポーションの納品もギルドからの依頼なんだ。

 その父さんの息子だから、僕も普通の薬師よりは薬草の使い方に長けている。

 父さんは自慢げに話を続けた。


「違法だろうが何だろうが、父さんと母さんが結婚しなければ、お前が生まれてくることも無かったんだから感謝しろよ。ガハハハ!」

「そ、そうだね」


 この男には反省するという言葉が全くないらしい。

 薬学に長ける分、一般常識に(とぼ)しいのは我が家の家系なのかもしれない。

 荷台にポーションを積み終えると、父さんがぼそっと言った。


「そろそろ、お前にポーションづくりの全てを任せないとな」

「それだと父さんが薬草取りをしないといけなくなるだろ? 薬草採りは今まで通り僕がやるから、日課の薬草採りが終わった後に教えてくれればいいよ」


 薬草採りに関しては既に僕の方が父さんより上だから、僕が採った方が効率がいい。

 父さんは品質にこだわるあまり、薬草取りに出掛けたら三日ぐらい帰ってこないことがザラだ。


「そうか。じゃあ、王都から帰ってきたら、とっておきの万能薬の作り方を教えてやるからな」

「うん! 期待しているよ」

「じゃあ、気をつけてな」

「じゃあ、行ってくるね!」


 まぶしい朝日の差す中、僕は王都に向けて馬車を進めた。

 この時はこれが父さんの顔を見る最後になるなんて思いもしなかった。

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