信仰と見返り
引き続き 遅い昼
「カグツチさんは鍛冶屋と言っていましたが、のこぎりや鉈を売ってもらえないでしょうか?」
「がははは。それは無理だな」
鍛冶屋なのに売ってくれないの?
もしかして神器みたいな高い武器ばかり作ってるから、僕には買えないということなんだろうか?
「特殊な効果は要りません。木の枝をはらったり、木を切れるような、普通ののこぎりでいいんです」
「シナトベから話を聞いてないか……」
カグツチさんは、はーっとため息を吐く。
「神から人間に神器を授けることは禁止されてるんだ」
「でも、僕は神器のこのスコップを貰いましたよ?」
「それはな……お返しだ」
「お返し?」
「ああ、以前お前さんから受けた恩に対するお返しで授けたものなんだ」
確か、シナトベさまはお弁当のお礼とか言っていたな。
それでもらえたのか。
カグツチさんは考え込むと額にしわを浮かべた。
「実はな、最近むやみに神力を使う神がおっての、神界規定が厳しくなって神が下界の人間に干渉することが禁止されておるんだ」
「神界規定?ですか」
「そうじゃ。神界規定とは神々の決め事。神々が信徒の為に直接手を貸すことで、人間界の勢力が変わるようなことは禁止されておる。例えばこの島からお主らを救い出して、元の村に連れ帰ることも禁止されておる」
「僕らを村に連れて帰っても勢力なんて変わりませんよ」
「そうかのう?」
「そうです」
「まあ、たとえの話じゃ。当然神器を授けることも禁止じゃ」
「じゃあ、この神器のスコップは?」
「それはな、神への信仰に対するお礼で与えた恩寵。簡単に言えばご褒美みたいなものじゃ。気にするな」
なるほど。
お祈りやお供え物をしたお礼なのか。
ならば、カグツチさんにもお祈りをすればいいんだな。
簡単なことじゃないか。
「じゃあ、僕がカグツチさんに祈りを捧げれば、のこぎりをいただけるのですね?」
カグツチさんは、またため息を吐いた。
「おぬしはシナトベの信徒じゃろう。信仰神の掛け持ちは出来ぬ」
ぐはっ。
そうなのか。
シナトベさまはお小遣いが厳しいと言ってたから、あんまり頼るわけにもいかないしな。
どうにかならないかな?
頼み込むしかないな。
「のこぎりがどうしても欲しいんです。手持ちの短剣では、枝をはらうことも出来ません。どうにかなりませんか?」
しばらく考え込んだ後に、カグツチさんは口を開く。
「そうじゃな……。シナトベを通してと言うことになるが、契約を結べばわたせないこともない」
「契約ですか?」
「実はのう、そのスコップを打つ時に宝刀を何本も鋳つぶしたのがバレての」
大笑いをするカグツチさん。
僕の親父と笑い方が似ている。
なんか他人とは思えずに親近感を持ってしまう。
「新しく宝刀を打ち直すために、オリハルコンの鉱石が必要なんだわ」
オリハルコンというのは、とんでもなく硬い魔力鉱石素材。
上等な魔剣の素材に使われるかなり入手困難な鉱石だ。
たいていは魔素の吹き貯まった坑道やダンジョンの奥底で採れる。
そんな鉱石がこの島にあるわけもない。
「オリハルコンはさすがに……」
「ダンジョンに潜ればすぐに手に入るだろう」
「いやいやいや、ダンジョンなんてこの島にあるわけがないですから」
「無いなら、作ればいい。シナトベに相談してみるんじゃ」
ダンジョンを作るって?
カグツチさんは、意味深な言葉を残して天界へと戻っていった。
かみさまポイント
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繰り越し 50ポイント
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支出 なし
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収入 なし
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合計 50ポイント




