お供え
前日夜 高天原ブティック・ヘブン
わらわは恐る恐る、アメノハヅチお姉さんの元を訪れた。
扉を開けた途端、お姉さんのネチっこい声が聞こえてくる。
「あら~、いらっしゃい~。待っていたわ~」
わらわが来ることがわかっていたみたいなのだ。
わらわの身体に絡みつくような声が怖いのだ。
恐るべし、神力の持ち主なのだ。
「あの~、服を作って欲しいのだ」
「シナトベちゃんの服ね。なにが欲しいのかしら? もふもふ着ぐるみ? それともバニーガール服?」
「そ、そんなのじゃないのだ! 普通の服が欲しいのだ。普段着の洋服なのだ」
「あら、シナトベちゃんが洋服が欲しいなんて……意中の男の子を必ず落とせるえっちぃ服を作ってあげるわ。この、おませちゃん」
満面の笑みを浮かべると、指先でわらわの額をちょこんと突くお姉さん。
ちょっと触れられただけで、体中の毛がゾワっと逆毛だったのだ!
怖いのだ!
嫌な予感しかしないのだ!
でも、わらわは必要なことを告げる。
頑張るのだ!
「作って欲しいのはわらわの服ではなく、わらわの信徒の女の子のミーニャの普段着なのだ」
「あら、シナトベちゃんも信徒を持ったのね」
「はいなのだ」
「じゃあシナトベちゃんは立派な女ね」
アメノハヅチおねえさんは「ふふふ」と笑った。
人の心を惑わすような、艶めかしい表情を浮かべたのだ!
怖いのだ!
またあれをやられるのだ!
「じゃあ、対価を支払ってもらうわ」
「対価って、またあれなのか?」
「そうよ、もふもふ(はーと」
「いやなのだ! あれだけは嫌なのだ!」
「でも、ダメ。もう逃げられないの。逃げたら大変なことになるわよ」
頭とおしりが、むずがゆくなったのだ。
触るとやっぱり!
「ケモミミと、しっぽがはえているのだ!」
「逃げたら、一生ケモミミと尻尾がはえたままよ」
「ううう」
「さあ! 存分にもふられなさい! 童女のケモミミは最高ね!(はーと」
わらわは夜遅くまで、もみくちゃにもふもふされ続けられたのだ。
*
朝
『はぁはぁはぁ、大変だったのだ』
日課のお祈りを済ますと、シナトベさまの疲れ切った声が聞こえてきた。
朝からどうしたんだろう?
『ミーニャの服を作ってもらうよう、頼みに行ったら大変な目に遭ったのだ』
本当に疲れ切ってる感じの声だ。
きっと、死んだ目をしてることだろう。
「なにがあったのですか?」
『思い出したくもないのだ』
「それは……お疲れ様です」
『ところで、今食べているのはなんだ?』
「トウモロコシです。おいしいですよ」
『わらわも食べたいのだ』
「今度来てくださいよ。ごちそうしますから」
『うむ! そうだ。肝心なことを忘れるとこだったのだ。ミーニャの服をかみさまショップのおしながきに載せておいたので、ポイントを稼いで注文するのだ』
おしながきを見ると商品が増えていた。
でも、ポイントが足りるかな?
服(ミーニャ専用。初回限定) 100ポイント
手持ちのポイントは90ポイント。
ギリギリポイントが足りないな。
できればミーニャに早く服を着せてやりたいんだけどな。
何とかならないんだろうか?
僕が考え悩んでいると、ミーニャがおしながきを指さしていた。
「ここに書いてある、お供え物をしてみますか?」
あー、そんなシステムがあったな。
「お供えってどうやるんだろう?」
「祭壇にお供えしてみましょう」
ひまわりの花、トウモロコシ、杉の新芽をお供えしてみる。
そして両手を合わせてお祈り。
すると、お供え物が霧のようになって祭壇から消えた。
そして、30ポイントもらえた。
あの必死なお祈りをしなくてもポイントが貰えるのか!
これは楽だ。
今度からポイント稼ぎはお供え一択だ。
もう一度、お供えすると物は消えたのにポイントはもらえない。
『同じお供え物は要らないのだ』
そんな声が聞こえた。
「じゃあ、返してくれよ」
再び祭壇に現れるお供え物。
でも、なんか足りない。
ひまわりと杉の枝は帰ってきたけど、トウモロコシは戻って来ない。
トウモロコシが戻って来ない事を問い詰めると『これは、おいしそうなので貰っておくのだ』との事。
気に入ってくれたみたいだ。
ポイントは貰えなかったけど喜んでくれたみたいなので、しばらくシナトベさまにトウモロコシをお供えしようと思った。
かみさまポイント
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繰り越し 90ポイント
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お供え +10ポイント(杉の新芽)
お供え +10ポイント(ひまわりの花)
お供え +10ポイント(トウモコロシ)
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合計120ポイント




