原因
突然、目の前に現れた女の子。
以前、山で助けたシナトベだ。
「呼ばれたから助けに来たのだ」
お弁当のお礼に、助けに来てくれたとのこと。
シナトベがどこから来たとか、そんな事はどうでもいい。
ミーニャをどうにかしないと。
「お願いだ。ミーニャを助けてくれ!」
僕はシナトベに縋る思いで懇願する。
シナトベは頷くとミーニャを見始める。
ミーシャの横に転がっている乳鉢を手に取って臭いを嗅いだ。
「おまえ、これをこの子に飲ませたのか?」
「水が無いので、飲み水代わりに飲ましていました」
「たわけもの!なのだ」
「たわけもの?」
「バカと言っておるのだ!」
「でも、水が無くて……渇きで死んでしまうから……」
「よりにもよって、フィラインにとって猛毒のネギ汁を飲ませる奴がおるか! バカなのだ」
そういえば、ミーニャは雑草汁を渡された時、たしかに『毒』と言っていた。
あれは比喩で言っていたんじゃなくて、本当に毒だったんだ。
あの時、僕が気が付いていれば……。
毒汁をミーニャに飲ませていた。
あれほど、僕を慕ってくれる娘に。
目の前が一瞬で真っ黒になる。
なんて僕は気が回らないんだろう?
なんて僕は無知なんだろう。
なんて僕は傲慢なんだろう。
僕は自分の過ちを悔やんだ。
「幸い、これは本物のネギじゃないから命を取りとめられるのだ」
「お願いだ。助けてくれ!」
「簡単なのだ。水を飲ませて毒を薄めれば助かるのだ」
「でも、この島には川は無いし、井戸を掘る道具もないんだよ!」
「ならば、前に施しをしてくれたお礼にこれを授けよう」
シナトベの手には、どこから取り出したのか淡く輝く銀色の綺麗なスコップが握られていた。
「これで泉を掘るのだ」
「いや、こんな岩だらけの地層で、スコップ一つで穴が掘れるわけもない」
「いいから掘ってみるのだ」
僕は疑いつつもスコップを岩だらけの地面に突き刺す。
サクリ。
まるで、砂を掘る様に、いやクリームをスプーンで掬うようにスコップが岩だらけの地面に刺さる。
「これは?」
「なんでも掘れるスコップなのだ」
聞きたいことはいろいろあったけど、そんな事を聞いている暇はない。
僕はがむしゃらに地面を掘り進める。
あっという間に掘り進む。
たぶん、200メトルは掘った。
それも一気に。
穴から這い上がる事なんて考えていない。
ミーニャに水を飲ませたい事だけを考えて、ひたすら掘り進む。
周りの壁がシットリと濡れ始めた。
もう少し掘れば地下水が湧き出すはず!
そう思った瞬間、ズズズとという音と共に壁が揺れる。
地響きと共に水がしみ出してきた。
地下水脈を掘り当てたらしい!
水の勢いは、一瞬で強くなる。
まるで桶をひっくり返したかのよう。
噴水の様に水が湧きだした。
吹きだした水に押し出されて、僕は地表に。
そして、掘り進んだ穴は泉となる。
掘ったばかりなのに、泉は水晶の様に透き通っていた。
飲み水だ!
これをミーニャに届ければ……。
僕は乳鉢で水をすくう。
ミーニャに膝枕をして飲ませた。
うんく、うんく……。
やがて自分で水を飲むようになり……。
ミーニャの目が開く。
「ジーンさま……」
僕の膝の上に乗っていることに気が付いたミーシャ。
あわてて飛び起きようとするのを、僕は止めた。
「もう少し、横になってなよ」
「私、また倒れていました。ごめんなさい」
「悪いのは僕だ。すまない、ミーニャ。僕のせいで……」
止めどもなく溢れ出す涙。
二度とミーニャを手放すものか!
僕はミーニャの胸の中で泣いた。
三部はこれにて終了です。
ストック、尽きましたw
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