プロローグ
まだまだ未熟で、至らない点もあるとは思いますが、
どうぞよろしくお願いします!
見回せばまわりは黒に埋め尽くされ、人々は口々に追悼の言葉を告げる。
何が何だか分からないまま連れ回され、可哀想にと憐れまれた。
集まった人達の瞳には涙が溜まり、ぽろぽろと零れていく。
透明な雫は真っ白な床に冷たい影を落とした。
わたしももう、12歳だ。何が起きたかなんて、言われなくても分かってる。
皆と同じように涙を流さなきゃいけないこと等、知っていた。
でも、悲しくはなかった。
父が死んだと重々しく告げられようとも、『あぁ、そうなんだ』としか思えない。
わたしには心がないのかと、そう思った時の方が余程悲しかった。
涙を流せるのが、羨ましかった程。
けれど、違った。
わたしだけじゃなかったんだ。
だって、やがて涙が乾けば、人々からは“後継者”“次期王”そんな話ばかり口を突いて出てくる。
悲しんで見せたのはただのお芝居なんだと思わせる、その話。
心に響かない憐れみの言葉が、逆に痛かった。
父親が消えたなんて、彼等にしてみれば他人事。
所詮、その一言に尽きる世界。わたしだって、悲しくないと意地を張った。
―――そうして、気付けば、お兄様もいなくなっていた。
次期王候補と呼ばれていた、第一王子のミカエル兄様も。
暗殺だとか自殺だとか囁かれたけれど、わたしにとってはどちらでも同じこと。
何を憎もうと、お兄様は帰ってこない。
関係ないことだと、どこか冷めた目で遠くから見ていた。
ただ、二人の死はわたしの運命を変えたということ。
それが、わたしの全てを狂わせたということ―――。
どこからどこまでがはじまりで、どこからどこまでが終わりなのか?
それすら解らない、長い長い物語が動き出していた……。