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新キャラ出ます。後半の方は当初書く予定とかなり変わって下書き無しで打ったのでミスが沢山あるかと思います。誤字脱字などありましたら報告お願いします。

「ただいまー」

「おう、帰ったか。凜はどうした」


 乱が家に帰るとガンジが机の上で魔道具を直していた。魔道具を直す手を止めて顔を上げる。


「こっちに向かっているんじゃないかな。凜のことだから戦闘自体はすぐ終わっているでしょう」

「そうか、ならいい。お前さん、これちょっと試せ」


 ポケットから手のひらのサイズの小さな箱を取り出して乱に放り投げる。乱はそれをキャッチする。様々な角度から見てみるが開けられるようなふたや、仕掛けは見当たらない。


「これ魔道具? 術式が見当たらないけど」


 魔道具とは物体に術式を施したもので、魔力を流せば誰でも扱えるものだ。術式は言ってしまえば魔方陣であり、術式を見ればどのような効果があるかわかるのだが、現在では誰もが魔法を使えるため必要がない。さらに言えば魔法陣を覚えている者も使う者ほとんどおらず魔道具は減る一方。現在あるのは過去に作られたものであり、希少性があるせいか家宝にしたりコレクションとして集める人が一定数いる。あるだけでも価値があるのだが使えれば価値は上がる。魔道具職人という魔道具を直すことを専門とする人がいる。ガンジもその一人だ。


「少し魔力を流してみろ。そうすればわかる」

「……本当に? まあ、やってみるけど」


 訝しみながらも小さい魔道具と思しきものにゆっくり魔力を流す。箱が淡く光り術式が現れる。

 乱は驚いて手を放してしまう。箱は重力に従い落ちることなく宙に浮いたままさらに輝く。


 なんだこれ? 一瞬で魔力をごっそり持っていかれた――。


 箱がひときわ強く輝く。

 何が起こるんだと期待して箱を見つめると、光はだんだん小さくなっていき、消えた。

 箱は浮力を失ったのか床に落ち小気味いい音を立てる。


「なにも起きないじゃない!!」


 乱は憤る。沢山の魔力を持っていかれたのだ何かあるのかと期待するのも無理もない。


「かかっ! 期待通りの反応だなあ。いや、人によって違うことが起こると思ったんだが俺と同じだ」

「人によって変わったりするものなの?」

「ない。そりゃ人によって魔力の質は違うが魔法陣においてそれは関係ないからなあ。ものは試しってやつだ」

「あっそう。にしてもこれ沢山魔力奪っていったのだけど」

「ああ、それについては知らん」


  ガンジはこれまで沢山の魔道具を直してきた。そんな彼でも魔力を奪う魔道具は見たことも聞いたこともなかった。


「そいつは、お前さんにやる。俺が持っているよりお前さんが持っている方がいいだろ。お前さんどうせ魔法陣なんて覚えてるんだろ?」


  確信めいた声で訊ねる。


「んー、どうかな。凛には負けるよ。私は真面目に覚えてないからね」


  にっこり笑いながら肯定する。その笑みは真面目にすれば凛は超えられると示唆している。

 

「それよりこれ。貰っていいの? 貴重なものだと思うのだけど……」

「別に貴重だと思うのなんて一部の所有欲を満たしたいやつだけだ。問題ない」

「そ、ならありがたく貰うね。ありがとうガンジさん」


  乱はポケットに箱を入れる。


「そーだ! ガンジさん私やりたいことがあるの!」

「なんだ?」


  両手を合わせてガンジを見る。


「おかしづく」

「却下だ」

「せめて最後まで言わせて!」







「ん~!このプリンおいしいー!」


 乱からのお菓子が作りたいという要望を一蹴したガンジは保冷庫からプリンを持ってきて乱の前に黙って差し出した。無言の「それを食って黙ってろ」という圧に負けた乱はおとなしくプリンを食べた。


「でもなんでプリンが? この家に普段お菓子なんてないのに」

「種花が寄こしてきたんだ。それにお前さんの菓子が作りたいってのもどうせ種花のを食ってきたからだろう」

「ん、大正解」


 プリンを頬張りながら肯定をする。


「にしても種花さんのお菓子はおいしい~」


 乱の口角が自然と上がる。 

 乱がゆっくりとプリンに舌鼓を打っていると扉をノックする音が響いた。


「なんだあこんな時間にハギの奴か?たくっ……」


 面倒くさそうにガンジは扉を開けた。


「何の用だてめえ――って、こいつあ騎士様かい?」


 扉を開けた先には白い鎧を身に纏った男がいた。顔に皺があり少し歳を感じさせるがガンジよりは明らか若い。


「事前の連絡なく訪問し申し訳ありません。私は王国騎士団三番隊隊長メータ・シルフィードと言います」


 右手を胸に当て丁寧に挨拶をする。綺麗な所作に育ちの良さがうかがえる。


「へえ、本当に騎士様だったのかい。で、騎士様がこんな辺鄙な村のはずれになにかご用かい?」

「ええ、とても大事な用があります。ここにいるのでしょう――異世界からの者が」


 乱がプリンを食べる手を止めた。


「はっ、異世界からやって来た奴なんてここにはいねえよ。仮にいたとしてもすぐ王宮に伝えてるさ」


 動じることなく嘘をつく。


「あくまで白を切るつもりか……」

「白を切るもなにもそんな奴はいねえんだよ。帰った帰った」


 追い返すように手を振る。しかし騎士相手にこんな態度でいいのかと乱が不安になる。案の定騎士のこめかみに青筋が走る。


「貴様! いい加減にせか! 私は王宮からの命により来ているのだ、早く聖女を出さんか!」


 大きい怒声が響き渡る。


「出さぬというなら貴様を聖女候補誘拐犯として刑に処することもできるのだぞ!」

「へえ、そしたらは俺は首つられて死んじまうのかねえ。聖女関連の罪なんて軒並み死刑だからよ――かかっ」


 恐怖など微塵も感じない声音。ガンジは扉から一歩も動くことなくメータと対峙している。


「よくわかっているではないか。死にたくないだろ? 死にたくないならそこをどけ! 中にいるのだろう!」


 メータがガンジの肩を押し無理やり中に入る。


「ふざけんなてめえ! 誰が入っていいって言った!」

「少し黙らんか『フリーズ』」

「――っ!」


 メータに食って掛かろうとしたガンジの動きが止まる。まるで氷漬けされたかのように。


「さて、異世界の者よどこに――」


 いるのだ、と言おうとしたところで言葉が途切れる。言葉が紡げなかった。メータの目の前に冷たい目をした美しい女性がいたからだ。質素な部屋には似つかわしい美しさ。儚いわけでもない、庇護欲を誘うものでもない。圧倒的な強さを感じる美しさ。

 メータは何も考えず膝を曲げていた。傅いていた。そして思った。


「あなたは――聖女だ」


 生物としての本能だった。逆らってはいけない。対等にいてはいけない。

 頭を下げるメータを見て乱は薄く笑った。


「私は異世界の人間ではないですよ?」


 嘘を言う。こちらが異世界の人間ではないと言えばガンジが罪を被ることは無い。


「いえ! あなたは異世界の人です! その服はこの世界のものでは無い!」

「それはそうですよ。私が独自に作ったものですから」


 優しく言いながら否定を許さないと圧を掛ける。だが、相手は鈍いのか気づかない。


「そうだとしたら尚更あなたは異世界の人であります。その服はもう1人の異世界の者と同じ服なのですから!」


 乱は内心で舌打ちをした。想定外だった。まあ、同じと言っても似ている服なだけで違う高校生もしくは中学生もしかしたらコスプレをしている人の可能性がある。同じ高校という確率の方が低い。


「本当に同じですか? 寸分違わずですか? ほら、よく見てください。違いますよね」

「あ――ちがい、ます」


 強制的に納得させた。洗脳に近い。


「よくできました。ご褒美に寝ていいですよ」

「ふぐっ――」


 男の腹に重い一撃を入れる。体がくの字に曲がりだらりと体の力が抜け床に落ちる。


「おやすみなさい」


 男を見下ろす乱はまるで女王のようだった。

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