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短いです。
急いでいたので誤字脱字が多いと思います。よろしければ教えていただけると嬉しいです
夜が明け、陽の光が窓から差し込む。人工の光ではない柔らかな光に気づき凜が魔術書から顔を上げる。
「……朝か。乱を起こすか」
凜は昨夜からずっと本を読み一つでも多くの魔法陣を覚えようとした。その結果一睡も出来なかったが。
眠気が襲う頭を起こすため頬を思い切り叩いた。ひりひりとした痛みが頬に広がる。
よし、これで大丈夫だ。
覚醒した頭で乱を起こし、一階へ行く。一階ではガンジがお茶を飲んでいた。
「おう、おはよう。凜、飯を作るぞ」
ガンジが湯呑を持って立ち上がり台所に向かう。凜もそれに続く。
乱もこっそりとついていこうとするがガンジが気づく。
「乱! お前は外で薪を割ってこい!」
「え! 嫌よ!」
速攻で拒否をする。
「なら魔法で薪を割るのはどうだ? 練習になるだろ」
「……! それならやる!」
魔法と聞いて一瞬で顔を変えた乱は嬉々として外へ飛び出していった。
それを見てガンジは胸をなでおろした。
「余計なもんは追い出せたところで準備するか」
食材と器具を出して調理の用意をしていく二人。
「ガンジさん。少し聞きたいことがあるんですがいいですか?」
「料理している間でも答えられるものだったらな」
野菜を刻みながら答える。
「それはしてみないと分かりません」
凜は鍋で出しを取りながら苦笑する。少し間が空いてガンジが、いいぞと言う。
「昨日魔術書を読んでいたんですが」
「ああ、だいぶ遅くまで読んでいたな」
「気づいていたんですか?」
実際は夜遅くどころか朝までだが。
「寝る前に外に出て上を見たら部屋から光が漏れていたからな。夜遅いのはあまり感心しねえぞ」
「すみません。次から気をつけるので」
今日から光が漏れないようにしよう。
「それで質問はなんだ?」
「ああ、実はその魔術書でページがない箇所、というより一部分ごっそりとなかったんですが、どうしてか分かりますか?」
ガンジが刻んだ野菜を鍋へと入れる。
「そいつは、闇の魔法の部分だな」
「闇の魔法?」
私は肉を捌きながらガンジさんに問い返した。
初めて聞くものだった。
「前に話した聖女伝説があるだろ。そこに出てきた悪魔と魔王が使う魔法でな。使う魔法すべてに黒い靄がかかるんだよ。魔術だと魔法陣がくろくなるんだけどよ。で、その魔術書と魔法書を書いた当時の魔法と魔術を極めた魔導士がいたんだ。魔導士がそもそも魔法と魔術を極めた奴を尊敬して言う称号なんだが、まあ、魔導士なんて呼ばれてたのは後にも先にもその人だけだろうけどよ。で、その魔導士が闇の魔法を出す方法を編み出し、魔法陣も作っちまって、それらもすべて網羅した魔術書と魔法書を大量に作っちまったんで今も残ってるんだが出版される前にその闇の魔法に関わる部分をすべて切り取られちまって今もそこは切り取られたままってことさ。これでいいか?――お、具材がいい感じだな」
鍋の中の野菜に串を刺して確認をする。するすると串が刺さる。ガンジは火をいったん止めた。
凜はフライパンで別の調理をしていた。
「悪魔や魔王の象徴であるから消されたってことですか。それで魔導士はどうなったんですか? 闇の魔法を編み出したってことは自分でも使えていたってことですよね」
闇の魔法を使っていてタダで済むとは思えないのだが。
「処刑された」
ガンジさんはご飯をよそいながらこともなげに言う。はるか昔のことだ感情移入する方がおかしな話だ。
「魔王の配下として首をスパーン、とな」
手で首をトントンと叩き凜に示す。
「俺から話せるのはこんなところだ。乱を呼んで来い」
乱を呼びに外に出ると風が髪を揺らした。見ると乱が風で薪を割っていた。
「乱ご飯だよ」
「あれ、もう出来たの。ちょっと待ってて」
乱が手を一振りしながら『ウインド』と言うと散らばった薪が一つに纏まって小さな小屋に収まった。
「よーし、ご飯ご飯!」
意気揚々と家に入り席に着く。テーブルには既に料理が並べてあった。
「いただきます」
三人が同時に言う。一度動き出した箸は止まることなく進んでいく。特に会話もなく着実にご飯が減っていく。
落ち着いた時が流れていたが、それを打ち破るかのようにドアが突然開いた。
ドアから現れたのはハギだった。
「大変だ! 王宮で聖女が召喚された! 一昨日らしい!」
「なっ?! 嘘だろ! いや、悪魔が出たならそうなるよな……」
ガンジがちらりと凜と乱の方を向いた。
初めて会ったときガンジは二人のどちらかが聖女ではないかと疑っていたがこの瞬間にその可能性は打ち消されたが
――こいつらはどうしてこの世界に来たんだ? もしかして巻き込まれたのか……。
「これでこの世界は安泰だな! 魔王の滅びが近づいたな!」
「ああ、そうだな。で、件の聖女はどんな子なんだ?」
「それはまだわからねえ。聖女が現れただけだとよ」
凜と乱は話を聞きながら食事を進めていた。
「てかお前さんそれだけ伝えに来たのか?」
「そうだが。どうせここまで伝わらないだろうと思ったからよ。しっかし、王都から一番遠いせいか情報が来るのが遅えな」
俺、引っ越そうかなとぼやく。止めとけとガンジが止める。
「冗談だよ。ま、それだけだからよ。じゃあな」
ハギが颯爽と家から出ていく。出ていったのを確認してからガンジは食事を再開した。
「私たち以外にも誰か来たってことですか、聖女が召喚されたってことは」
食事を終えてから乱が訊ねる。
「まあ、そういうことだな。それと同時にお前さんらは聖女ではないことになったがな。俺としては安心だ。もし仮にお前さんらのどっちかが聖女だったら誘拐されたと思われて死刑になってたかもな」
かはは、と笑う。
正直笑いごとで済ませられるものではなく、凜と乱はぎょっとする。
「それくらい聖女は大事なんだよ。お前さんらには分からねえかもしれねえがな」
それでも死刑は行き過ぎではないか? 凜が心の中で問う。
「聖女の話はここまでだ。出かけるぞ。これからの生活のために村をしっかり案内するからよ」
立ち上がり玄関に向かう。それに嬉しそうに乱が着いていく。この二日で乱はガンジのことがいたく気に入ったみたいだ。この世界に来て初めて会った人ということもあるが、それ以上にガンジという人を気に入ったようだ。まあ、それは私もか。口元を緩めガンジと乱に続く。
さて、私たちが聖女でないとすると一体誰が聖女になったのだろうか。少々気になるがもし龍樹だったら盛大に笑ってやろう。
一か月ほど月日が経ち、王宮で聖女とされる人物が感情のない顔で立ち上がりある方向を指さす。
「この先から私と同じ力を感じます」
そう静かに言い聖女は凜と乱がいる方を指し示めした。