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まさかのべつの話にこれを投稿するという愚を犯してしまいました。恥ずかし。

『異空間召喚』の魔法陣が描かれた部屋に昼間から少年と男が二人でひたすら何かを紙に書きながら魔法陣を調べていた。紙に書かれていることをほかの人が読み取ろうとしてもあまりにも乱雑で読み取れないが何故か互いには分かるらしい。

 一人は凜。彼女の周りには大量の魔法陣とその効果が書かれた紙が散らばっている。それらを見ながら頭を捻っている。

 魔法陣の効果は類似のものから推測をして書き出しているが見たことの無いものが圧倒的多数。さらに厄介なことに魔法陣と魔法陣が重なって分かりにくいようにしてある。意地でも解読させないという意志を感じる。


 正直な所の全ての魔法陣が分かったところで反転させる──送り還す魔法陣が作り出せるかは不明だ。先の見えない状態で諦めたくなるが何もしなければ事態は動かない。少しでも希望があるなら縋らなければ。

 ペンと紙を取り、作業を続けていく。


「りーんー! 休憩しようー!」


 声とともに背中に衝撃が走る。メルクが覆いかぶさってきたのだ。こいつ、飽きたな。


「休憩なんて突然どうした。いつも各自で適当に取っていたじゃないか。」


 話しながらも作業を続ける手は止まることは無い。ここでの作業は既に二週間経過している。学校はもちろん行っていない。


「たまにはこの部屋から出ようってこと。さすがにずーっとここじゃ息が詰まるよー。休憩がてら外に出ない、ね?」


 肩から顔を覗かせてくる。

 確かにメルクの言う通り気分転換は必要かも。根詰めすぎても良くないしな。


「メルク離れろ。」

「え、嫌だよ! 行くって言うまで離しませーん。」


 お腹に回した腕に力を入れてくる。しかし、元の力が弱いせいか簡単に抜け出せる程だ。


「出かけるから離せってことだよ。このままじゃ出れないだろ。」


 凛がそう言うとメルクは破顔し凜から離れる。


「なら早く行こう!」

「ちょ、ちょっと待て!」


 手を引かれ無理やり立たされる。勢いが良く、足元にあった紙が宙を舞う。片付けるが面倒になったと思いつつも後でいいかとメルクのなすがままに城を出た。


 久しぶりに来た城下町は初めて来た時と同じように人で溢れかえっていた。メルクの案内の元目的もなく食べ歩き状態となっている。地球で見た事のある食べ物もある。同じ生物がいればそれはそうか。


「はいどーぞ。」


 メルクがいかの丸焼きを差し出してくれる。お金を渡して受け取り、一口噛むと味が染み出してくる。ぶらぶらと色んなものを食べながら進んでいると人通りのない居住区が目につく。


「あっちには何も無いのか。」


 指をさして訊ねる。生気を感じないが夜に開く店が多いのだろうか。いわゆる花街かな。


「あそこは闇市とか、まあ、表でできない店しかないから。行っても楽しくないし別のところ行こうよー。」

「ふーん。」

「娯楽もないところだしそのお金がない人の集まりだから……。」


 貧困街か。少し気になるから見てみよう。


「ねえ! そっちに何もないって言ったじゃん! なんでいくのー? ──ああ、もう!」


 大声でも呼びかけても止まる気配がなく後を追いかける。凜の服の裾を放さんとばかりに強く掴む。ちらりとメルクを見やると前を向く。

 人の姿が全くないわけではないが一人、二人と言ったほどだ。


「うう……久しぶりに来た。何も変わってない。」

「来たことあるのか?」

「え、うん。結構前だけど……。」


 寂しげな顔をしている。。何か事情があるのだろうが、関係のないことだし余計なことに首を突っ込んでもいいことはない。

 少しだけメルクが距離を縮めてくる。少し歩きにくくなったが特に引き離すことはせずそのまま歩いていく。

 

 静かな通りを歩いていく。家屋はほとんど二階建て、こじんまりとした家ばかりだ。路地を覗いてみると表ではできないような店ばかりで時たま男か女か区別のつかない細い悲鳴が聞こえてくる。そんなことを繰り返しているとメルクが少しだけ凜から離れた。


 路地があれば必ずと言っていいほど覗いていると、くすんだ灰色の髪で汚れた服を着て膝を抱えて座る男の子を見つけた。建物と背中のわずかな隙間から豊かな毛が見える。


「ん?」


 興味を引かれ注視したところそれは消えていた。


「……。メルク、ここでちょっと待っててくれ。」

「え、え、凜?」


 メルクの手を服から引きはがすと陽の光が入らない先に向かって行く。

 あれは確実にあった。とすればあの生命体である可能性が高いけど。少年の目の前まで来ると膝を曲げて目線を合わす。すると少年が瞳を向ける。それは赤い瞳で魔法陣が浮かんでいた。


「……その目、何ができるんだ?」


 突然現れた興味の対象に直前まで聞こうと思っていたことを吹っ飛ばしそう聞いていた。


「……。」


 少年は何も答えない。凜にむき出しの警戒心をあらわにしている。

 誰だ、この男。そう考えると魔眼にズキズキと痛みが走りあることを知らせる。


「なあ、どういう力があるんだその目は?」

「はっ、誰が教えるかよお前みたいな男の格好を、ぐっ──!」


 した女に、と言おうとしたところで白い布に口を覆われる。いったいどこから出たのか、目の前の人物は何一つ動いていないのに。


 凜は言おうとしたことを察した時点で魔法陣を思い浮かべ口をふさいでいた。反射に近い反応だった。メルクにばれるわけにはいかないからな。


「さて、どうして俺が──女と分かった。神獣。」

「ふ―! ふー!」


 耳元に口を寄せてメルクに聞こえないように訊ねる。向こうもどうして神獣と分かったか気になるようだ。いや、まさか本当に神獣がいるとは思ってなかったんだけど。


 神獣とは現在ユノメリアと休戦状態にあるブルガ帝国に住まう種族だ。基本二足歩行で人は違って毛深い体に獣の耳に尾、手足を持つ。さらに人間に擬態も出来ると。


 少年も擬態していたのだろうけど不完全で尻尾が見えていたのだ。


「尻尾出ていたんだよ。けど、どうして王都のこんなところに? それに魔眼持ちだったらブルガ帝国も知らないはずがないと思うんだけど。まあ、それはいいとして──どうしてわかった?」


 魔術をといて口を開放する。少年はぷはっと新鮮な空気をいっぱいに吸い込むと凜をこれでもかと睨んでくる。


「なんだよお前! 突然きあいつと同じ匂いがする! あいつの仲間か!?」

「あいつ?」


 匂いが同じってまさか乱なにかしでかしたのか……?


「あいつの近くにある光の玉に触ったらここにいたんだ! 絶対あいつのせいだ! 一か月前に突然来たあいつのせいなんだ。 人間のくせにおやじに取り入って!」

「一か月前? おい、そいつについて詳しく教えてくれ!」


 一か月前。それは私たちがこの世界に来た時だ。

 龍樹がこの世界にいるのか! だとしたら迎えに行かないと!


「やっぱりあいつの仲間なんだな! あいつは土御門龍樹って名乗った。気づいたら知らないところにいたって!」


 いたぞ龍樹! そうかブルガ帝国のはずれにでもいったからブルガ帝国からの報告も何もなかったんだな。そうとわかればやることは決まった。


「なんで、俺こんなとこにいるんだよ……。帰りたい、帰りたいよ……。」


 悲しげに呟く少年を見てどうも自分たちと重なってしまう。

 ……龍樹を探すとしたらこの子が必要になるよな。うん、そうだ。そのはずだ。

 言い訳に過ぎない。けれど帰れない状況それを見過ごすのは自分の状況を許すような気がしてならないのだ。


「──なあ、家に戻りたいか?」


 今、ユノメリアとブルガの国交はほとんどない状況だ。だけど私がそれを変える。


「当たり前だ!」


 ここでこの子と会ったのも何かの縁だろう。


「なら、俺がお前を家に帰す。これはお前のためじゃない。ついでだ。でも、悪い話じゃないだろ?」


 お前のためじゃない、その言葉に少しだけ目が痛んだ。少年はその痛みを信じて凜の手を取った。

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