25
短いです。キリがよかったので。次話は長くしたいなぁ、と思うだけです
「──ん! 凛! 起きて! 」
自分を呼ぶ声で目が覚める。頭が酷く痛く、倦怠感もすさまじい。
「大丈夫!? こんな所で倒れてうなされていたけど。」
メルクが目に涙を貯めながら凜の顔を覗き込む。曰く、揺すっても中々起きなくて目を覚まさないかと心配させたみたいだ。
「大丈夫。きっと悪い夢でも見たんだよ。えーとここ王宮の廊下か。」
真っ直ぐな廊下で人は誰もいない。倒れているのを見られていなかったと安堵する。しかし、どうして倒れていたのか、ここにいるのか全く分からない。
確かメルクを探してトーマスに会ってそれから別れてその後……。
ダメだ。思い出せない。唐突な記憶の欠如に恐怖を覚えずにいることは不可能だった。
「本当に大丈夫? 顔色悪いけど。」
記憶が飛んでいるんだ、顔色も悪くなる。なんて言うことも出来ずただ力なく笑う。
思い出せないなら仕方ない。今はやるべき事をやらなければ。
「メルクお前に手伝って欲しいことがあるんだ。」
顔を引き締め大丈夫だと安心させるようにする。
「手伝って欲しいこと?」
「ああ、なに、簡単なことだから。」
耳に口を寄せる。
別にそんな難しい事じゃない。少しだけ嘘をついてもらうだけだ。にやりと笑いメルクに囁いた。
「うん? そんなことでいいの? 必要があるんならいいけど。」
「ありがとう。犯人を見つけ出すにはこれが手っ取り早いからさ。」
「うわ、めっちゃ悪い顔。」
メルクは少しだけ距離を取った。
これで大丈夫だ。別にジヴェストさんに頼んでも聞いて貰えそうだったけど断られふ可能性が高すぎたかはメルクに頼むしかなかった。さて、後は準備だけだ。
試験当日。謁見の間の扉の前で二人は立っていた。
「準備は出来た?」
準備というのはもちろん犯人を炙り出すためのものだ。
「もちろん。そっちは試験で勝てるのか?」
「当たり前じゃない。私を誰だと思ってるの。」
乱が凜の左手を掴む。
「それを聞いて安心した。全力でやれ。乱。」
今度は凜が強く握り返して離す。
乱が扉に手をかけたところでさっきから気になっていたことを訊ねる。
「他の人達が見当たらないけど早く来たのか?」
「まさか、その逆よ。私目立ちたがり屋なの。忘れたの?」
「え?」
凜は嫌な予感がして咄嗟に自分に『遮断』の魔術をかけた。謁見の間には大勢の人が並びその全員が扉の真ん中にいる乱に目を向けていた。
──こいつ!! 私に遅い時間を伝えたな! これはジュシアさんもグルになってたな。
「遅れて申し訳ありません。乱、ただいま参上しました。」
遅れることで注目を集める。乱が目立ったこと、魔術のおかげで誰にも見つからず凜は離れ、壁と端の壁と同化した。
「よい。遅れたと言っても数分。問題ない。」
ユーノが奥から声をかける。謁見の間の一番奥で初めて会った時と同じ椅子に腰掛けている。その前では桜が前を見据えて立っている。その横に乱も立つ。二人が揃ったのを確認し、ユーノが立ち上がる。
「皆の衆、集まってくれて感謝する。今日この時、異世界より呼ばれし者から聖女を決する。この日、我らの国を救う聖女が生まれるのだ!刮目し見よ、そして祝え、聖女の誕生を。今日ここにいる全員が証言者であり承認者だ。では、坂本桜よ。その魔法陣の中心に立ち全力の光魔法を放て。」
桜は緊張した面持ちで魔法陣の中央に立ち息を吸い込む。集中しているのが分かる。静かな空間これ程多くの視線を集める中何かするというのはとても大変だろう。とても自分には無理だと、凜は思った。
さて、ここから私がするのは目を凝らすことだ。犯人の仕掛けた魔法陣は既に私が弄って坂本桜の魔力の増幅分が犯人に跳ね返るようになっている。
「『ホーリーライト』!」
巨大な光の柱が現れる。それは天井をすり抜け天にまで上る。謁見の間にいる人々は天井を見上げる。凜はそのタイミングで犯人候補を一人一人見ていく、そして──見つけた!
全員が上を向く中一人だけ顔を歪め下を見ている人物がいた。凜は片手をあげて空中に魔法陣を描く。
犯人は顔上げ焦るように周りを見渡す。そして手を上げ魔方陣を従える凜を見つけ、睨んでくる。
優雅に笑い犯人であるシーノに手を振る。
余裕な態度に彼の顔が歪む。酷く憎悪に満ちた顔で思わず凜はニヤけてしまう。
「素晴らしかったぞ桜! 光の魔法はもちろんのとこだがこれほどの規模、この王宮にいる者誰もが出せないほどのものだった。よくやった桜よ。では、蘭前へ。」
桜の魔法が終わりユーノが褒めちぎる。桜は安堵の息を吐くと後ろに下がり、乱が入れ替わりで魔法陣へと入る。
桜と打って変わって乱から緊張は一切感じられない。そこにあるのは確かな自信のみだ。
凜を睨んでいたシーノは乱を一途に見始める。凜も静かに乱を見つめる。不安はない。乱なら大丈夫という確信がある。
乱は息を吸い込み勝ち誇った笑みを浮かべ声を上げる。
「『ホーリーライト』!」
桜と同じ大きさの光の柱が天へと上る。それを見て凜は思わずあくどい笑みを浮かべてしまう。乱なら坂本桜より強い魔法を放てるのに。とすれば乱の狙いは。
「素晴らしい! 素晴らしいぞ二人とも! 二人ともこれ程とは……。」
立ち上がり歓喜の声を上げる国王。周りの貴族達も二人の破格の凄さに圧倒されている。
「私は考えていたのだ。二人に相応の実力があるならば二人とも聖女としようと。」
その言葉にざわめきが生まれるが、肯定のざわめきだ。これは決まった、と乱はほくそ笑む。
「異論はないようだな! 二人の実力は拮抗している。どちらかを選ぶのではなくどちらも聖女となることでお互いをさらに高めることができるだろう。さあ、祝うがいい。今ここに二人の聖女が誕生したのだ!」
右手を上げ高らかに宣言をする。拍手で包まれた謁見の間。そんな中ただ一人シーノだけが作り笑いだった。




