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お久しぶりです。長らく空いてしまって申し訳ありませんでした。

「ら、乱……こいつは――。」

「メルクっていいまーす。魔術研究者ですぅー。で、そっちはって訊きたいところですけど異世界の人ですよねー?だって聖女候補と同じ服ですからー。」


 凜が穏便にメルクの紹介をしようとしたが、本人が煽るようにしたためさらに凜の居心地が悪くなる。


 メルクの挑発的な言葉に乱はにっこりと笑う。


「あなたには訊いていないですよ?凜に訊ねているんです。」

「えー、そんなの分かるわけないですよー。それに本人から言った方が確実だよねー、凜?」

「え、あ、そ、そうだな。」


 突然問われて頷いてしまう。蚊帳の外になると思って完全に意識を別にやっていた。あまり聞いてないけど大丈夫だよな?


「だってさ、蘭さん?」


 メルクが勝ち誇った顔を浮かべる。しかし、乱はそれを嘲笑う。


「勝ち誇っているところ悪いけど、凜、全く話を聞いてないわよ。驚いて返事をしただけよ。」


 う、さすがに乱にはバレている……。

 凜は気まずそうに顔を逸らす。それを見てメルクも悟る。


「まじで、凜? ま、別にいいんだけどさー。あーあ、なんか興が削がれちゃったー。」


 そう言ってメルクは本を持って立ち上がる。


「お誘いはまた今度にするねー。言っとくけど蘭さんが想像しているようなのじゃないですからー。魔術の研究を手伝って欲しいってだけ。今後もなにかと会うと思うけど、その時はよろしくー。」


 先程までの剣呑な雰囲気は霧散し、メルクはそのままどこかへ行ってしまった。図書室の静かな空気が凜の周りに戻ってくる。


「な、なんなのあいつ……。」


 毒気を抜かれたのか少し疲れた表情をしている。


「凜。変なことされてない?」


 心配そうな顔で訊ねてくる。


「何も無いよ。少し話していただけ。それよりも聖女候補と会ったってどういうこと?」


 メルクよりもそちらだ。

 乱は聖女候補と会った時の状況を語った。


「ふーん。なるほど。だいぶこの世界に馴染んでいるみたいだな。」


 そうなると仲良くしない方がいいな。私達はこの世界を見捨てることを前提に行動をしている。乱の行動はまあ、なんというか自分のためだからたとえ帰るまでにこの世界を救ったとしてもそれはただの副産物程度だしな。問題はその子に帰る意志があるかどうかだがそれはおいおいでいいだろう。


「さて、部屋に戻るか。」

「そうね。で、聖女候補に関してはどうするの?」

「別にどうも。俺達の目的は元の世界に帰ることそれだけだ。」


 超然と言い放つ。この目的は何があっても変わらない。


「確かにそうね。いつも通りで安心安心。早く行きましょう。部屋にジュシアさん来てるだろうし。」


 乱の言葉通り部屋に戻るとジュシアさんが待っていた。


「あら、おかえり。ちょうど良かった。これから王族の人達とお食事会よ。それに貴族と聖女候補様もいるから。服とか替えたいのならこの部屋にあるものなら何を使ってもいいわよ。許可はおりているから。」


 そう言ってジュシアは手を前で重ね、部屋の隅で置物のように佇み始めた。見た目は完璧な使用人だ。


 服か……。さすがに着替えた方がいいかな。クローゼットに礼装があったから……。


「乱、どうする。着替えるか?」


 乱の方を向くと考える素振りをしだした。そこから数分考えている。


 一体何を悩んでいるんだ?


 訊ねようかと考えたが口に出さないでおいた。クローゼットから何着か礼服を取り出す。


「凜、その服しまって。」

「その服ってこれか?」

「ええ、着替えないで行くわよ。」


 考えるのをやめた乱の顔は笑っていた。


「何笑ってるんだ?乱も着替えないってことか?」


 確認に聞くと、ええ、もちろん、と返ってきた。


「ちょっと反応を見たいのよ。」


 ふふふ、と声に出して笑う様子は美しいが凜には不気味に映る。

 しかし、少しして乱の真意がわかる。


「ああ、そういうことか。了解。ジュシアさん、食事はどこでやるんですか?」

「一階の食堂よ。案内はするから場所は覚えてちょうだい。食事まで時間はあるけどもう行く?それはそれで構わないけれど。」

「じゃあさっそく案内を頼んでも?いいよな乱。」

「もちろん。」


 乱も快諾してくれる。


「わかったわ。さっさと行きましょう。途中で必要になりそうな部屋があったらそれも教えるから頭に叩き込みなさいよ。」


 ジュシアさんは丁寧に道中の部屋を教えてくれた。覚える優先度も伝えてくれて中々いい教え方だった。


「こちらが食堂になります。私は部屋の端にて待機していますので入り用の際は二本指を立てていただければすぐに向かいますので。」


 それだけ言うと食堂の壁と一体化してしまう。


 部屋から出るとジュシアはずっと敬語だった。それにとても違和感を感じて面白かった。


 食堂には大きなテーブルが一つあり、テーブルの上には既にいくつか料理が並べてあった。


「凜、こっちに私達の名前が書かれたプレートがあるよ。」


 食堂の扉から少し離れた席に凜、蘭と書かれたプレートがあり、凜の横のプレートには坂本 桜と書かれたプレートが置いてあった。


 この人が聖女候補か。坂本 桜……同じ学年に全く同じ名前の人がいたな。


「ふーん。あれ、こんな名前なの。」

「あれって言うな。とりあえず席に座るか。」


 二人は大人しく席へと座る。


「髪染めたい。」


 なんの脈絡もない話題を乱が口にする。


「染めれば?」


 特に何も思わず凜は素直に思ったことを返す。


「そんなあっさりと。どの色がいいとかないの?」

「別に何色でも似合うだろ。」


 似合うと言うより似合わせるんだ。何色だって同じだ。


「当然でしょ。私なんだから。」

「この料理美味しそうだな。」

「せめて反応だけはして!興味を持てとは言わないから!」

「はいはい。」


 おざなりな返事だけをして料理をじっと見る。


 うーん、美味しそう。これ絶対いい食材使ってるって。


 仮にも王族が食べるものだ。当たり前のことだが。


「もういい!」


 いじけた乱も料理を見始める。他に見るものがないのだ。


「蘭さま、凜さま。他の方がこちらにむかっています。」


 ジュシアが静かに報告をする。ジュシアの言う通り足音が聞こえる。二人は姿勢を正す。


「誰かしら。」

「さあ、誰だとしても嫌なのは変わりない。」


 食堂の扉がゆっくりと開く。その先に現れたのは乱と同じ制服を着た坂本 桜だった。

気になってるんですが一話当たりの字数ってどれぐらいがいいんでしょうか……?

どれくらいがいいのか探り探りやっているので一話あたりの字数にかなりムラが出来ているので……

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