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息抜きにかいたものです。趣味全開です。

 ユノメリア王国の王宮の大広間にて聖女召喚の儀が行われようとした。


「グレアよ。確かにこの魔法陣で聖女がよびだせるのだな?」


 ユノメリア王国の国王であるユーメ・ユノメリアが半信半疑で魔法陣の近くにいる男に訊ねる。

 男――グレア・ヴァルガーは笑みを浮かべ


「もちろんでございます。メルク!準備はどうだ!」

「万全ですよー。あとは魔力を流し込むだけですー」


 軽薄そうな感じでメルクと呼ばれた者が答える。


「メルク!その緩い態度をやめろっていつも言ってるだろうが!――はっ、すいません」


 メルクの同僚がメルクを叱り、その後慌てた様子で謝る。


「よい、それより早く召喚の儀を」

「――わかりました。全員所定の位置へ!……よし、ついたな。では――魔力注入!」


 大人数が魔法陣を囲み一斉に魔力を注ぐ。

 少しずつ、少しずつ魔法陣が光を帯びていく。十分ほどすると魔法陣がひときわ強く輝き天に向かって光の柱が伸びる。あまりのまぶしさにその場にいた者全員が目をつむる。


 光の柱があらわれそれが消え全員が目を開けると輝きを失った魔方陣の中央に一人の少女がいた。


「ん――うーーん。……え!な、なにここ!え、あ、夢かなぁ……」


 ひどく困惑しており夢かと疑う。自身の頬をつねったりする。

 一方その少女を見た者たちは


「うおおおおおおおお!聖女様が来たぞ!これで魔王の脅威は去ったも同然だ!」

「これでこの国にも平穏が訪れるぞ……先王よ、この国は必ず守りとおします―」


 国王は静かに平穏が実現すると確信し、他のものは狂喜した。

 それを見た少女はひどく怯え縮こまっていた。

 少女の様子に気づいた者が状況を説明をする。


 全員の意識が少女に向いてる中一人だけ地図を見て当惑していた。それは召喚された者のおおよその位置を数分間大まかな位置を映し出すもので、万が一魔法陣とはずれた場所にあらわれたときのために用意したものだ。一つは王宮のある王都に印が出ていた。だが、


「どういうことですか……これは――」


 その地図には国内の王都とはかけ離れた場所に二つの印があった。そして二つの印はゆっくりと消えていった。








 天門院てんもんいん道場で双子が稽古していた。

 姉の天門院凜――服装と雑に短く切られた髪のせいで男と間違われることが多く、男装するようになった。弟の天門院乱――美形で趣味の一環でいつも女装をしている。

 凜が乱に飛び掛かる。それを乱が軽くいなし腹に一撃を入れる。凜はわざとそれをくらいその手をつかみ投げる。乱は空中で一度くるりと回り着地すると低い姿勢で足払いをする。凜は倒れながら手をつき足を高く上げ踵を乱に振り落とす。乱は頭上で腕を交差し受け止め、はじく。お互い一歩も引くことのない、一進一退の攻防が続く。

 攻防を続け数分後、お互いの首に手刀がかかりすんででぴたりと止まる。そしてそのまま手をおろす。


「ふう、今日はここまでだね」

「そうね。どうする武器の方もする?」


 少し考えるそぶりをしてから凜が頷く。

 二人は道場の奥に保管されている武器をすべて持ってきた。日本の古来の武器から最新の銃まですべて取り揃えてある。


「さて、どれからしようか」

「うーん、さすがに銃はだめ?」

「当たり前だろ。このあいだそれで警察沙汰になっただろ。すぐ近くの胡桃沢さんの親戚の人が慣れていなくて通報したの忘れたのか?」

「あははーもちろんおぼえてるよ。あの時はびっくりしたもん。警察が青白い顔しながら道場に来たんだもの。民間人の通報を無視するわけにいかないし、でもうちに喧嘩は売りたくないって感じだったもの」


 くすくすと乱が笑う。わかってるならいいと、凜が武器を選び始める。

 うーん、方はもう必要ないしな……あ、鎖鎌はそんな練習してなかったな。

 凜が真面目に考えている横で乱は短刀を懐に入れていた。


「今日は短刀にするの?いや、乱はそもそも練習する必要ないけど昨日も短刀じゃなかった?」


 凜が訊ねる。


「いや、ただ身につけておきたいだけ。もう少し選ぶよ」


 そう言って武器を選び始める。その様子を見てふーんと言いながら凜もまた武器を選び始めた。言い知れぬ不安を抱えたまま。

 

 二人が武器を選び始めて数分後、道場の戸が来訪者によって開かれた。来訪者は近くのデパートの紙袋を持った制服を身にまとっている二人の幼馴染かつ道場の門下生の土御門つちみかど龍樹たつきだった。


「あ、たっきー」

「灰にまみれて朽ち果てろ」


 それぞれの反応を聞いて、あきれ顔作る。


「凜いい加減に“たっきー”はやめろ。龍樹だ。それと乱は俺に対する口調をどうにかしろ」


 龍樹が一息に言い終えると凜と乱は鼻で笑うだけですませた。

 それを見てため息を吐く。


「そういえばお前ら今日が学校だって知ってたか?夏休みは昨日で終わったぞ」


 二人が凍る。そして


「――嘘だろおおおおおお!」


 二人が声をそろえて叫ぶ。


「は?は?は?ざっけんな!制服家じゃねえかよ!くそっ」

「乱、口調!」


 乱の乱れっぷりを凜がたしなめる。


「口調なんかどうでもいいだろ!てか、凜が忘れてるってどういうことだよ」

「私だって忘れることぐらいあるわ!」


 二人のやり取りを見ていた龍樹がゆっくりと口を開く。

 

「……制服ならあるぞ」


 龍樹が紙袋持ち上げる。二人が食い入るように龍樹を見つめる。


「お前らの家に行ったら制服も着ないで道場に行ったっておばさんが言ってたからまさかと思っておばさんから制服預かって来たんだよ」


 龍樹から光が迸っているように二人には見えた。その時龍樹は二人にとっては神様だった。


「さすがたっきー!さっそく着替えてくるわ!」

「龍樹にしては気が利くな」


 龍樹から紙袋を受け取り道場の奥に行き着替える。

 奥から男子の制服を着た凜と女子の制服を着た乱が出てきた。

 二人はしっかりと学校から許可を(もぎ)取って制服を着ている。


「着替え終わったか。行くぞ」


 そう言って龍樹が出口に向かおうとした途端、道場の床が白く光り始めたかと思うと辺りが真っ白に染まっていき三人は浮遊感に襲われた。


「!」


 三人は驚きで声が出なかった。凜はすぐさま乱を抱き寄せた。何があっても離れないように。

 そして龍樹もそちらになんとか近づいていくが、近づいたところで


「来んな」


 乱が龍樹に蹴りを入れる。無重量空間のように龍樹がすーと遠くへ行く。


「乱!てめえ!」


 一気に眩しくなる視界。途切れてく意識の中凜は乱をさらに強く抱きしめ悪い予感が当たったと唇を噛んだ。







 木々が生い茂る森の一角で多種多様の武器が散乱している中央で凜と乱が抱き合うように眠っていた。


「――ん、ううん」


 先に目を覚ましたのは凜だった。


「ここは、どこだ……?」


 辺りを見渡し見たことのない植物がいくつもあったのですぐに知らない場所だと判断を下した。

 ここは本当にどこだ……?見たこともない植物……図鑑でも見たことがない――まさか、地球じゃない?――いや、熱帯地域の未開の地という可能性もあるだろう。だとしても、日本ではない。ああっ!わかんない!

 辺りの木々、植物から得られる情報からそこまで考えると凜は頭を抱えた。正直何が起きたのかさっぱりわからず、得られたことからも状況が好転するとも思えない。恐怖という色で脳が染められていく。


「とりあえず乱を起こそう」


 恐怖で思考が思わぬ方向にいかないよう切り替えるために乱を起こすことにした凜。さらに口に出すことで無理やり思考を切る。


 乱をゆする。するとすぐに目を覚まし辺りを見渡すと、一つ息を吐いた。そして上を見上げ目を見開く。


「乱、ここどこだと思う?」

「……さっぱりよ。辺りを見渡したけど見たことない植物。日本ではないのは確かね」

「だよな。そこまではいいんだけど……」


 凜と乱が同じ結論にたどり着き凜は少し落胆しながら乱に同意する。

 凜はもしかした乱ならわかるかもしれないと思っていたが、そううまくいかないと落ち込む。だが、その思いは最悪の形で叶えられた。


「……凜」

「ん、なに?」

「一つ分かったことがある」

「!」


 乱が凜に詰め寄る。乱の顔はひどく真面目だった。


「え、ま、まさか……う、嘘だよなあ?」

「ふふっ。お姉ちゃんが同じ結論を思い浮かべていてうれしいよ」


 一度は思い浮かべあり得ないと打ち消した可能性。この可能性だけは避けたかった。

 回避したかった現実が弟から告げられる。家族の前のみ見せる男で


「ここは――地球じゃない」


 地球じゃない。帰る手段が蜘蛛の糸ほど細くなり不確かになった瞬間だった。

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